役に立つオモシロ医学論文

早食いの人は身長が縮みやすい!? 日本人対象の調査結果

写真はイメージ
写真はイメージ

 食事の速さは健康状態の変化と関連することが知られており、特に早食いは糖尿病や肥満のリスクを高める可能性が報告されています。また、過去の研究報告によれば、肥満は低身長と関連しており、肥満と低身長はともに心臓病の発症と関連することが示されています。

 一方、早食いが身長に影響を及ぼすかどうかについて、詳しいことはよく分かっていませんでした。そんな中、食事の速さと身長の関連性を検討した研究論文が、「プロスワン」という科学誌に、2023年4月26日付で掲載されました。

 この研究では、日本人労働者8982人(平均51歳)が解析対象となりました。食べる速度は、「遅い」「普通」「速い」の3つに分類され、過体重(BMIで25以上の太り過ぎ状態)や、身長が低下(男性で年間1.78ミリ、女性で年間2.06ミリ)した人の割合が比較されています。なお、研究結果に影響し得る年齢、性別、飲酒状況、喫煙状況などの因子について、統計的に補正して解析されました。

 平均で3.5年にわたる追跡調査の結果、過体重となった人の割合は食事の速度が「遅い」人と比べて、「普通」の人で1.96倍、「速い」人で2.92倍、統計学的にも有意に増加しました。一方、食事の速さと身長の関連性については被験者の体格によって異なりました。過体重でない人は、食事の速度が「速い」人で身長低下が34%多かった一方、過体重の人では逆に、食べる速度が「速い」人で身長低下が48%少ないという結果でした。

 身長の低下については解析結果の一貫性を欠くものの、論文著者らは「中年以降に始まる身長の低下は心臓病の危険因子であり、食事の速度を遅くすることは、身長の低下と心臓病の予防に有益かもしれない」と結論しています。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

関連記事