患者に聞け

糖尿病(2)1日20キロのウオーキングを開始「何をやってきたんだ、との恥ずかしさがあった」

1日20キロのウォーキングで…
1日20キロのウォーキングで…

 体力に自信があったAさんがすぐに始めたのがウオーキング。通勤時、普段より1時間半早く家を出て4駅先まで歩く。パソコンで距離を測ると片道10キロ近くあった。仕事での歩数を考えると1日20キロ近くになる計算だったという。食事は1日2食とし、白米は茶碗に軽く1杯にとどめた。

「じつは、毎年健康診断前は数値を良くするためにダイエットしていたのですが、今回は諸事情からそれができず、健診数日前からウオーキングを始めていたのです。運動靴で通勤し、会社で革靴に履き替えました。むろん、夜のお酒は断りました。どうしても断れない相手との酒席が1度ありましたが、ウーロンハイを途中からウーロン茶に変えてどうにかしのぎました」

 最初は片道だけのつもりのウオーキングだったが、すぐに結果を出したいAさんは、帰宅時も4駅前から電車を下車し、1時間半かけて帰る生活を続けたという。

「朝は周りの風景が見えて人通りもあるので気を張っていられましたが、夜道はいくら歩いても自宅にたどり着けない、そんな錯覚に陥りました」

 春先とはいえ、長距離のウオーキングでは汗をかく。臭いを気にして消臭剤と着替えをカバンの中に持ち歩き、トイレで着替えたりしたが、電車内での視線が気になったという。

「水分補給として空のペットボトルに水道水を入れて鞄に忍ばせました。水筒だとかさばって重くなるからです」

 糖尿病は怖い病気だ。しかし、受診して薬を飲めば血糖値はすぐに下げることができる。60代のAさんがなぜそんなにつらい思いをしてまで自力で血糖値を下げようと考えたのか?

「さまざまな理由で糖尿病になる方がおられるでしょうが、私の場合は明らかに自身の不摂生が原因。田舎から出てきて何をやってきたんだ、という恥ずかしいという思いがあり、摂生するだけして血糖値を下げて、どうしても下がらないレベルになれば薬に頼ろうと考えたのです」 (つづく)

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