患者に聞け

糖尿病患者編(6)「薬を2種類から1種類減らしましょう」 努力の結果が出た

薬を減らすことはできるが…(写真はイメージ)/(C)PIXTA
薬を減らすことはできるが…(写真はイメージ)/(C)PIXTA

 春の健診で空腹時血糖が170(㎎/デシリットル)台、HbA1cが9%台の異常な高血糖を記録して、医師から「非常事態」を宣言された60代の男性Aさん。糖尿病治療専門医の最初の診察までの10日間に、連日、通勤時の長距離ウオーキングに励んだ結果、体重は5キロ減少し、健診時170以上あった空腹時血糖値は140、9%台のHbA1cは8%台に低下した。それから3週間後、再び糖尿病治療専門医の前に立ったAさんは、さらなる血糖値改善に成功したという。

「空腹時血糖値は99、HbA1cは7%でした。正直、私も“下がり過ぎ”と思うほどです。医師も『努力されたのですね。数値を見る限り、Aさんは軽い糖尿病でたまたま健診前に不摂生だったのでしょう』と驚いていました」

 とはいえ、今回の数値は毎朝2種類の薬を飲んでのもの。Aさんは3週間前にジャディアンス錠10ミリグラムとトラゼンタ錠5ミリグラムという薬を処方してもらっていた。

「医師は続けて『薬は1種類に減らしましょう』と言い、尿への糖排泄量を増やすことで血糖値を下げるジャディアンス錠10ミリグラムだけを飲むことにしました。体への負担が軽いからです」

 Aさんは喜ぶと同時に不安を覚えた。この1カ月と同じ努力をこの先も続けていく自信がなかったからだ。その不安をなぜか医師に知られたくなくて笑顔で聞いたという。

「次回さらに数値が改善したら薬をやめられますか?」

 すると、医師はこう答えたという。

「それはどうでしょうか? 仮に空腹時血糖やHbA1cが正常値内になっても、食後血糖値が急上昇する状態ならやはり血管にダメージとなり、動脈硬化が進むことになります。忙しいAさんは薬なしでの食後血糖値の上昇幅は調べていませんが、それが数カ月穏やかな状態にならない限りは、薬をやめていいとは言えません」

 新たな宿題にうんざりしたAさんのその後については改めてリポートする。(この項おわり)

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