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狭心症(2)亡くなった父も心臓病で入院「遺伝のせいかもしれない」

これまで大病の経験がなかったので…
これまで大病の経験がなかったので…

 桜前線が北上中の今年3月中旬、東海林治郎さん(仮名=68歳)は、都内にある循環器専門の病院を訪ねた。年間2000件近い救急搬送を受け付けている、急性心筋梗塞や狭心症患者などの循環器治療専門病院である。

 当時はまだ新型コロナの規制が続いていた時期だった。東海林さんは病院の受付窓口で新型コロナ感染者の対策として「検査、入院中は家族の面会は全面的に禁止。入院、退院時の付き添いも1人まで。洗濯物の受け渡しは1Fの受付で」といった詳細な注意書きを手渡された。

 東海林さんはこれまで大病の経験がなかったため、「狭心症の疑い」という心臓に関わる病名に少し不安を抱きながら、診察室で担当医師と向き合ったという。

 問診では、「いつ、どんな時、体のどこに、どんな症状が出ましたか。痛みや圧迫感はどのくらい続きましたか。ほかに持病はありますか。血縁者に心臓病の人はおりませんか」といった質問が30分ほど続いた。

 東海林さんの亡くなった父親は、生前、心臓病で入院したことがある。

「私が心臓が悪いのは遺伝なのかとも思いました」

 同病院で「狭心症」と診断されるまで、問診を含めて10通りほどの検査手順があった。「血液検査」「心エコー検査(超音波で心臓の状態をみる)」「運動負荷試験(歩くなど運動しながら測定する心電図検査)」……。

 検査の最中、常に頭に浮かんだのは仕事のことだった。

「いま手がけている仕事は1年近くかけて準備して、これから仕上げに取り掛かる段階。早く検査が終わり、できれば狭心症の疑いが晴れないかなあと、そればかり考えていました」

 夕方、いくつもの検査を終えて少々疲れ気味で帰宅した東海林さんは妻に伝えた。

「3日後にもう1回精密な検査をするらしい。どうも私の病名は『狭心症』かもしれない」 (つづく)

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