高齢者や脳血管障害後などは、嚥下機能が低下するケースが多いと前回お話ししました。
脳血管障害後には、咳反射が低下してしまうことが知られていて、その原因のひとつとして迷走神経知覚枝から咽頭や喉頭・気管の粘膜に放出されるサブスタンスPの減少がわかっています。実際、繰り返し肺炎を起こす高齢者から得られた喀痰中のサブスタンスP量は、健常人に比べて減少していることが報告されています。
高血圧の治療薬である「ACE阻害薬」は、咳を引き起こす物質であるサブスタンスPやブラジキニンの分解を阻害する作用もあるため、人によっては空咳の副作用(約1~5%)が現れます。しかしこの作用は、嚥下反射と咳反射を高めることにもなるので、これにより誤嚥性肺炎を予防する効果が得られると考えられているのです。
誤嚥性肺炎の予防効果がある薬としては、ACE阻害薬以外にも、アマンタジンやシロスタゾール、半夏厚朴湯なども知られています。
前回、嚥下機能が落ちている場合は、とろみをつけた食事も効果的だとお話ししましたが、薬が飲みにくい場合にも、とろみをつけた水やゼリーなどで服用することは有効です。時折、錠剤を粉砕したり、カプセル剤の中身を取り出して服用しているケースも見かけるのですが、これらは行う前に必ず薬剤師に確認をとってください。
薬の中には持続的な効果を得るために工夫された医薬品(徐放薬)や、胃酸で分解しないために特殊なコーティングが施された医薬品などもあります。これらを知らずに粉砕してしまうと、急激に薬の効果が出てしまったり、全く薬の効果が得られない、などの問題が起こってしまうリスクがあるのです。
最近は薬を水に溶解してから投与する方法(簡易懸濁法)なども増えていますが、いずれにしても、医薬品を加工することになります。正しい手技やその行為を行ってはいけない医薬品などについて、必ず薬剤師に確認しておきましょう。
感染症別 正しいクスリの使い方