科学が証明!ストレス解消法

スマホを自分の近くに置いておくだけで認知機能が低下する

ついついスマホに手を伸ばしてしまう
ついついスマホに手を伸ばしてしまう

 スマートフォン(以下、スマホ)が近くにあると、用もないのになんとなく操作してしまう──という人は多いのではないでしょうか? 誰かから連絡が来ていないか、SNSアプリに新しい情報が更新されていないか。そうした複合的な理由から、定期的にスマホを取り出しチェックする。

 実は、「スマホが手の届くところにあると、電源がオフであったとしても認知能力が低下する」というドキリとするような研究(2017年)があります。

 研究を主導した米テキサス大学オースティン校のウォードらは、被験者800人をコンピューターの前に座らせ、集中力を要するようなテストを受けてもらう実験を行いました。その上で、被験者たちにスマホを好きなように置いてもらうように指示しました。ある人は机の上に下向きに、ある人はポケットやバッグの中に。また、テストをするにあたってスマホを持ち込みたくないという人は、別の部屋に置いてもらうようにも指示したといいます。

 その結果、スマホを別の部屋に置いている被験者は、どのようなケースであれ目に見える(肌身に感じる)範囲に置いていた被験者よりも、大幅に成績が優れていたそうです。さらには、スマホを目に見える範囲に置いていた被験者と、ポケットやバッグなど目に触れない場所に置いていた被験者とでは、後者の方がわずかにテストの結果が上回りました。

 つまり、目の前のタスクに全力で取り組んでいたとしても、スマホが「ある」と感じるだけで集中力や認知能力が低下することが示唆されたというわけです。しかも、スマホのオン・オフに関係なく低下することも分かりました。

「スマホがそこにあるだけで、限られた認知リソースの一部がそちらに向いてしまう。無意識のうちに脳のリソースがスマホに向けられている」とは、ウォードらの弁です。たしかに、仕事や作業が一段落すると、自然とスマホを見てしまう……。これは、脳が「そこにスマホがある」と認識しているために、意識する・しないにかかわらず手が伸びてしまうのです。

 また、米ニュージャージー州ラトガース大学の研究(18年)では、「教室にスマホやノートパソコンがあると、全体の成績を下げる可能性がある」と指摘しています。118人の学生を対象にテストを受けてもらったのですが、その際、半数にはスマホやノートパソコン、タブレットなどの機器の使用を認め、残りの半数は禁止にしてテストを受けてもらったそうです(許可されたときのみスマホやノートパソコンを使用できるという条件下)。ふたを開けると、デバイスを使用していない学生であっても期末試験の成績が平均で5%低下していたというから驚きでしょう。

「スマホが目に入る」だけで脳のリソースは奪われていく。しかも、教室のような同じ空間内にあるだけで影響が生じる──。私たちの脳にはスマホがなくてはならないものだと刷り込まれています。だからこそ、集中したいときや頭を休めたいときは、スマホを手の届かない見えない場所に置くようにしましょう。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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