高齢者の正しいクスリとの付き合い方

割ってはいけない3種類のクスリ…かみ砕いて服用するのもNG

写真はイメージ
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 高齢者の方の中には、「1回0.5錠」といった感じで錠剤を半分に割って服用している方もいらっしゃると思います。医療で使われている錠剤の多くはそのように半分に割ることができるのですが、中には“割ってはいけない”錠剤も存在します。今回は、そういった割れない錠剤の中でも代表的なものについて紹介します。

 1つ目は、「吸湿性が極めて高い」錠剤です。半分に割るということは、残りの半分を次回服用分としてとっておく必要があります。錠剤の中には周りをコーティングして吸湿性が高くても大丈夫なようにしているものもありますが、そういったクスリを半分に割るとその断面は当然コーティングされていないので、空気中の水分の影響を受けてしまいます。吸湿性とは若干異なりますが、潮解性があるクスリは空気中の水分の影響で液体になってしまう性質があるので、やはり半分に割ることができません。

 2つ目は、「腸溶性コーティングされた」錠剤です。腸溶性とは「胃で溶けずに腸で溶ける」ことを意味しています。腸溶性コーティングされるクスリの代表は、胃酸で効果が弱まってしまうものや、胃で溶けると胃潰瘍などの副作用のリスクが高いものが挙げられます。腸溶性コーティングされた錠剤を半分に割ってしまうと、先ほどと同様に断面はコーティングされていない状態になります。結果として本来の目的が失われてしまい、クスリの効果がなくなってしまったり、副作用のリスクが高くなってしまいます。

 3つ目は、「長時間作用する」錠剤です。すべてではありませんが、こういったクスリの中には成分がゆっくりと放出される(溶け出す)ように錠剤自体に工夫されているものがあります。これを徐放錠と呼び、そういった錠剤を半分に割ってしまうと、本来ゆっくりと放出されるはずの成分が急激に放出されてしまう、つまり目的と異なった効果の出方になってしまうことになります。たとえば、降圧薬の中にも徐放錠があって、これを半分に割ってしまうと急に血圧が下がってめまいや立ちくらみのリスクが高くなってしまいますし、本来の長時間効果を発揮するという目的も失われてしまいます。

 われわれ薬剤師はこうしたクスリが「1回0.5錠」といった感じで処方されていないか必ずチェックしています。みなさんに覚えておいていただきたいことは、こういった半分に割れない錠剤をかみ砕いてしまうと、やはり問題が起きるということです。錠剤をかみ砕いて服用する方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、万が一、そういう方がいらっしゃったら、かみ砕かずに服用するようにしてください。

東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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