科学が証明!ストレス解消法

私たちは過剰に「幸・不幸」の想像を膨らませる傾向がある

幸福感は人それぞれ
幸福感は人それぞれ

「完璧主義」という言葉があります。仕事はもちろん、プライベートでも完璧を目指してしまう。そのため、ささいなことが気になってしまい、周りとの関係性にズレが生じる。そうした軋轢の中で、人間関係に疲れてしまう人もいるかもしれません。

 他者の悪いところに目が届いてしまうのは、あなたが性悪だったり心配性だったりするからではありません。ですから、過度に自分を責める必要もありません。悪い部分に目がいってしまうのは、人間の性質上、「ネガティビティーバイアス」が働いてしまうからです。

 ビジネスパーソンや学生など各分野の専門家が集まってプレゼンをする「TED」というアメリカの講演会があります。その中で、心理学者のダニエル・ギルバートは、「宝くじで3億円当たった人と、事故で下半身麻痺になってしまった患者。1年後の幸福度はどちらが高いでしょうか?」という質問をしています。

 みなさんは、どちらだと思いますか?

 ギルバート氏の答えは、「どちらも変わらない」でした。下半身麻痺になったら不幸に感じるのではないか……多くの方がそう思うかもしれません。しかし、それは「インパクトバイアス」といって、「不幸になるんじゃないか」「失敗するんじゃないか」「不自由になるんじゃないか」という具合に、出来事のインパクトが大きいと、実際はそれほど影響がなくても、過剰に幸不幸の想像を膨らます傾向があるからです。

 実際には、自分が幸せだと考えれば、ものごとのインパクトに関係なく幸せなことは幸せだし、不幸なことは不幸なのです。出来事の大小はさほど関係ない……。つまり、人間は幸福感を自分でコントロールできる生き物なんですね。まったく真実は異なるのに、事の重大さを勝手に決めつけてしまう人間という生き物は、困った生き物であり、身勝手な生き物なわけです。

 ですから、結局のところ、「完璧」も人それぞれだということ。あなたが完璧を目指しても、Aさんはそれを完璧だと思うかどうかは分からない。さらには、あなたがミスだと思って指摘したことを、Aさんはミスだと思っていないかもしれません。

「世の中には、いい人もいる、嫌な人もいる。人生にはいろいろある。人なんて、人生なんて、そんなもんだよな」

 完璧を追求することも大事でしょうが、それ以上に「森羅万象に完璧なんてありえない」と割り切ることもとても大事なことです。

 自分の幸福度を向上させるには、「自己決定」が欠かせません。また、人は自分で決意・決断したと思うことに対しては心から納得し、それに従って行動する傾向があります。これを心理学用語で「凍結効果」といいます。他人に判断を委ねたり、隣の芝生に影響されたりすることは、それだけ意志が弱くなり、匙を投げやすくなってしまいます。自分は自分、他人は他人。自分で幸福感をコントロールするようにしましょう。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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