新型コロナウイルスワクチンが開発された当初、2回にわたって接種することが推奨されていました。一般的には、1回目と同じ腕に2回目のワクチンを接種します。しかし、2回目のワクチンを1回目と反対の腕に接種した場合、ワクチンの有効性にどのような影響があるのかについて、詳しいことはよく分かっていませんでした。そんな中、ワクチンの接種部位で免疫の機能に違いが生じるのかを検討した研究論文が、生物医学の専門誌に2023年7月31日付で掲載されました。
ドイツで行われたこの研究では、新型コロナウイルスワクチンを接種した303人が対象となりました。被験者のうち、2回目のワクチンを1回目と同じ腕に接種した人は147人、1回目とは反対の腕に接種した人は156人でした。
2回目のワクチンを接種した後に血液検査を行い、中和抗体の強さやスパイク特異的CD8T細胞などが比較されました。なお、中和抗体とはウイルスの毒性を低下させるタンパク質のことです。また、スパイク特異的CD8T細胞とは、新型コロナウイルスに感染した細胞を攻撃する免疫細胞で、その量が多いほど強い免疫が得られたことを意味します。
分析の結果、中和抗体の強さは、2回とも同じ腕にワクチンを接種した人と比べて、反対の腕に接種した人で、統計学的にも有意に低下していました。スパイク特異的CD8T細胞が検出された人の割合も同様に、2回とも同じ腕にワクチンを接種した人で67.2%であったのに対して、1回目とは反対側に2回目のワクチンを接種した人で43%と、統計学的にも有意に低いことが示されました。論文著者らは「この結果は、2回目のワクチンは同じ腕に接種することを支持する」と結論しています。
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