ニューヨークからお届けします。

米国で人気の「鼻づまり薬」は効果なし…米食品医薬品局発表で波紋

経口摂取での効果は期待できない
経口摂取での効果は期待できない

 アメリカで市販されている風邪薬「鼻づまりを止める成分」には全く効果がない──。米食品医薬品局がこう発表し、驚きが広がっています。

 この成分フェニレフリンは、ナイキル、スダフェッド、タイレノールなどアメリカで最も一般的な経口風邪薬に含まれ、鼻づまりを解消する効果があるとされてきました。

 ところが食品医薬品局の発表によると、この成分は鼻に直接スプレーすれば有効ですが、経口摂取の場合、体内に吸収されるのはわずか1%で、効果は期待できないとのこと。これまでこうした風邪薬に頼っていた市民の間では、今後何を飲めばいいのか?と混乱が広がっています。

 それにしてもなぜ、全く効果のない成分が使われていたのでしょうか? 

 実は、かつて鼻づまりに効果があるとして風邪薬に入っていたのは、プソイドエフェドリンという成分でした。ところが1990年代のアメリカでは、覚醒剤を作るためにこの成分を抽出する事例が増加。そのためプソイドエフェドリンが含まれる市販薬は禁止されてしまいました。

 そこで代替成分として採用されたのが、フェニレフリンです。この薬は60年以上前、現在のような厳しい審査を受けることなく認可されました。

 これほど長い間、効果がない成分が使われていたのも驚きですが、さらにびっくりなのは、こうした風邪薬が何事もなかったかのように、今も店頭に並んでいることです。理由は、「効能はないが特に害もないから」とのことで、新たな代替成分が決まるまではそのまま販売を続けるようです。

「消費者より利益優先の製薬会社が考えそうなこと」、「だったらせめて値段を下げるべきでは?」と、多くの市民は憤っています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事