医者も知らない医学の新常識

鼻水の「色」によって抗生物質を使うのは誤り? 米国医師会雑誌が報告

鼻水の色での診断はあてにならない(写真はイメージ)

 風邪症状が長引く原因のひとつが副鼻腔炎、いわゆる「蓄膿(ちくのう)症」です。鼻の奥の副鼻腔と呼ばれる空洞に細菌などが増殖して炎症を起こし、膿(うみ)がたまるのです。

 蓄膿は鼻詰まりや頭痛の原因になりますし、喉の奥に流れ込んだ鼻汁が、咳や痰がらみなどを起こす場合もあります。長引く蓄膿はぜんそくを悪化させたりすることも知られています。

 通常、細菌感染に伴う蓄膿に対しては抗菌剤(抗生物質など)が使用されます。一番多く使われるのは抗生物質のペニシリンです。

 ただ、“どういう患者さんに抗菌剤を使用するべきか”という点については、まだ専門家でも見解が分かれています。透明な鼻水に色が付き、黄色や緑色の粘稠(ねんちゅう)な状態になることは蓄膿の特徴のひとつとして考えられています。

 それでは、そうした症状があれば抗菌剤を使用してよいのでしょうか? 今年の米国医師会の医学誌に、小児の蓄膿症に対して、鼻水の色で抗菌剤を使用した場合と、鼻汁の細菌培養検査を行って原因となる菌が検出されたときに限って抗菌剤を使用した場合とを比較した、臨床試験の結果が報告されています。

 それによると、培養で菌が検出された場合に限って抗菌剤を使用すると症状が早く改善しましたが、鼻水の色が変わった場合に抗菌剤を使用しても、そうした改善効果は見られませんでした。鼻水の色での診断は、実際にはあまり当てにはならないようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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