女性の「糖尿病」は閉経後に急増する…注意が必要なタイプはこんな人

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 甘いものばかりを食べているのに、なぜうちのカミさんは糖尿病にならないのか? 不思議に思う旦那さんもいるのではないか。じつは女性は男性に比べてある時期まで糖尿病を含めた生活習慣病になりにくいことが知られている。女性ホルモンのエストロゲンが糖尿病になるのを防ぐ働きをしているからだ。そのため、エストロゲンの分泌が極端に低下する50代以降は糖尿病の発症リスクが高くなるという。糖尿病と腎臓疾患を専門に診ている「まごめ内科・腎クリニック」(東京都大田区)の井上禎子院長に話を聞いた。

「女性は糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりにくい。男性と違ってあまり暴飲暴食しない、またストレスを感じながら不規則な生活をする人が少ない、などもその理由ですが、女性ホルモンであるエストロゲンの影響が大きい。エストロゲンは血液中の糖分を全身の細胞に取り込むのに必要なインスリンの働きを良くしたり、脂肪の燃焼を促す働きがあります。血管内皮で一酸化窒素を産出し、血管を柔軟にして血管を拡張させます。血管が柔軟なら、血圧も下がりますし、動脈硬化リスクも低下します」

 逆に言えば、女性はエストロゲンの分泌が低下する時期になると、糖尿病を含めた生活習慣病の発症リスクが高くなるということだ。それはいつか。一般的に女性のエストロゲンの分泌量は18~40歳ぐらいが最も高く、40歳ぐらいから減り始め、閉経で急激に減少する。一方、女性の糖尿病の発症は50歳ぐらいから目立って増える。

「平成28年国民健康・栄養調査」によると、男性の糖尿病患者の割合は30~39歳で1.3%、40~49歳で3.8%、50~59歳で12.6%、60~69歳で21.8%、70歳以上で23.2%。一方、女性は、30~39歳で0.7%、40~49歳で1.8%、50~59歳で6.1%、60~69歳で12%、70歳以上で16.8%となっている。加齢とともに糖尿病の患者数が増えるのは同じだが50代で急激に増えているのがわかる。

「日本人女性の閉経を迎える平均年齢は50歳ですが、個人差が大きく、早い人で40代前半、遅い人で50代後半です。これは女性の糖尿病患者数の増加時期と一致します。つまり、女性は40代から糖尿病リスクがアップするとともに、動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞といった、脳血管障害リスクも高まります。50代以降は要注意です」

 問題は、閉経の前後は女性の心身にさまざまな変化が表れるため、どの症状が糖尿病によるものなのかがわかりにくいことだ。

「閉経の前後5年間を更年期と言い、他の病気を伴わないさまざまな症状のうち、とくに重く日常生活に支障が出る症状を更年期障害と言います。更年期障害の症状は3つに大別できます。1つ目は血管拡張や放熱に関するもので、ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗など。2つ目はめまい、動悸、頭痛、肩こり、疲れやすいなどその他の症状。3つ目はイライラや情緒不安定といった精神症状です。一方で糖尿病では、喉がよく渇いて水を頻繁に飲む、おしっこの回数が増える、疲れやすい、食後に急激に眠くなる、体重が減る、など。膀胱炎や膣カンジダを繰り返し発症する、プライベートゾーンがかゆい、という場合も糖尿病の可能性があります。糖尿病だと免疫が低下して感染症になりやすいからです」

■やせている方が高リスク

 ただし、自分が糖尿病になりやすいタイプだという自覚がないと、こうした自覚症状と糖尿病が結びつかず発症に気がつかない。

「糖尿病になりやすく注意の必要な女性は、更年期以降、家族や親戚に糖尿病になった人がいる、急に太った、運動習慣がない、炭水化物の摂取割合が多い、ストレスが多い生活が続いている、といった人です。また、妊娠中に妊娠糖尿を疑われた、大きな赤ちゃんを産んだ場合も同じです」

 ちなみに日本人は遺伝子の影響でインスリンの分泌量が欧米人に比べて少なく糖尿病になりやすい。とくにBMI(体格指数)が18.5未満のやせ形女性は食後に急激に血糖値が上がる「耐糖能異常」が多い。標準体重の女性の7倍との報告もある。

「こういう女性はインスリンの分泌量が低く効きが悪い。しかも食事量も運動量も少なく、エネルギー低回転タイプで、血糖を蓄積する骨格筋量も少ない。日本はやせた女性の割合が約20%と先進国の中でも高い。やせた女性こそ糖尿病に気をつける必要があります」

 パートなどの収入で家計を支えながら、家族の面倒をみているカミさんは定期健康診断も受けず、自分の健康は二の次で働き続けている場合が多い。そんなカミさんの健康を気遣うのは夫の愛情であり、義務でもある。幸せな老後を迎えるためにも、カミさんの耳元で「健康診断に行っておいで」とささやくことが大切だ。

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