注目の前立腺がん新検査「phi」で何がわかる? 2021年から保険適用に

前立腺がん診断に新たな指標が…
前立腺がん診断に新たな指標が…(C)日刊ゲンダイ

 前立腺がんの診断に役立つ新たな指標として注目されているのが、「プロステートヘルスインデックス(phi)」だ。2021年11月から保険適用となっている。どういうものなのか? 「佐々木クリニック泌尿器科芝大門」の佐々木裕院長に聞いた。

 体内にがんができると、そのがん特有の物質が血液中や排泄物中に増えてくる。この物質を腫瘍マーカーという。

 腫瘍マーカーが高値ならがんを疑い、さらに検査を行う。前立腺がんの場合、PSAというタンパク質が腫瘍マーカーだ。

「PSAは、もともと前立腺の細胞内にあるタンパク質で、組織が壊れると血液中に漏れ出します。よってPSAは、前立腺がんだけでなく、前立腺炎や前立腺肥大といった他の病気でも高値になる場合があります。まずは、PSA高値なのはがんの影響なのか、あるいは他の病気の影響なのか、鑑別検査を行います」

 前立腺がんには、生命予後に影響を与える可能性が高く、速やかに侵襲を伴う治療が必要ながんと、すぐに治療せずとも生命予後に影響が低いがんがあると考えられている。前者を「臨床的意義が高いがん」、後者を「臨床的意義が低いがん」と呼ぶ。

「前立腺がんは最終的に生検で確定診断を行います。臨床的意義が低いがんの場合、手術、放射線治療などの根治治療をすぐに行わずに、PSAを定期的に調べフォローする監視療法でも対応できます。しかし、こうした臨床的意義が低いがんは、生検をまだする必要がなかった可能性があるとも考えられます。不要な生検の回避は、患者さんにとっても大きなメリットがあります。そのための検査指標の一つが、このphiになります」

 phiは、前立腺がん組織の中に蓄積しやすい物質([-2]proPSAなど)を採血で測定する。がんの可能性をPSAより高い精度で調べられる可能性がある。とはいえ、最初にチェックする腫瘍マーカーではなく、あくまでもPSAが先だ。

「phiは、補助診断のひとつです。すべてのPSA高値の患者さんに対してphiを行うわけではありません。PSAがグレーゾーンの場合は、phiの結果が生検検査の要否に有効なひとつの手掛かりになる場合があります」

 “PSAがグレーゾーン”というのは、PSA4~10の間。25~40%の割合でがんが発見されるといわれている。言い換えると、60~75%の割合でがんが発見され“ない”ので、不要な生検になる可能性もある。近年はMRIを行い、異常所見があれば生検に進む一方で、MRIで異常なしとなれば、必要に応じてphiを行い、生検の要否を判断する。

 phiは数値が高いほどがんの可能性が高くなる。phiが27.2未満ではがんの可能性は低くなるが、10%くらいはがんを見逃す可能性があると報告されている。

「一般的に、phiが27.2以上なら、MRIの結果も合わせて生検の要否を判断します。MRIで異常所見があれば、その部位を狙って組織を採取するターゲット生検、そしてランダムに組織を採取する系統生検を行います。また、MRIの異常所見がない場合は系統生検を行います」

 phiが低値の場合は、生検を行わずにPSAの数値をフォローする。

「前述の通り、phiはあくまでも補助診断ですので、カットオフ値以上であれば生検を必ず行うといった意味ではありません」

 不要な生検を回避するのに役立つ指標が増えた意味は大きい。

■保険適用

 phiが健康保険適用となるのは、PSAがグレーゾーンの場合。前立腺がんの診断の確定または病気が進行して再生検が必要かどうかを決定するまでの間に、原則として1回を限度に測定できる。

 ただし、生検などで前立腺がんの確定診断がつかない場合は、3カ月に1回に限り、3回を限度として保険適用でphiを行える。

「いずれにしてもその必要性、適応はお近くの泌尿器科でよくご相談ください」

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