しみ、しわ、たるみが目立ち…糖尿病の人はなぜ早く老けるのか?

「酸化」と「糖化」に気をつける
「酸化」と「糖化」に気をつける

「糖尿病の人の肌は、しみやしわ、たるみが目立ち、老化が進みやすいことが知られています。原因は高血糖が長期間続いている人は、体内で糖とタンパク質が結びついてできる終末糖化産物(AGE)が大量につくられるからです。AGEは一度できると二度と元のタンパク質と糖に戻ることができない物質です。これが体内にどんどんたまることで、肌の老化を進めるのです」

 こう言うのは糖尿病専門医で、「AGE牧田クリニック」(東京都中央区銀座)の牧田善二院長だ。牧田医師は北海道大学医学部を卒業後に米国に留学。5年間、AGEを研究し、世界で初めてAGEの測定に成功、現在は治療の傍ら化粧品の商品開発にも携わる、美しい肌のプロでもある。

 肌の老化といえば、これまでは「酸化」が問題視されてきた。体内に取り入れた酸素が変化して活性酸素となり、それが全身の細胞を傷つける。紫外線や喫煙、ストレスなどが「お肌に悪い」と言われるのは、こうした刺激がより多くの活性酸素を分泌させるからだ。近年はそれに加えて「糖化」に注目が集まっているという。

「ある世界的な化粧品メーカーは、AGEが肌にダメージを与えていることを科学的に証明するために、皮膚を培養し、糖質を加えてAGEをつくる実験を行い変化を観察しました。その結果、糖化によりコラーゲンのタンパク質にAGEが生じると細胞は表皮が厚くなり、3層ある皮膚の2層目に当たる真皮を萎縮させることがわかったのです。また、コラーゲンを分解する酵素の分泌が2倍に増えたことがわかりました」(牧田院長、以下同)

 ちなみに、紫外線やストレスなどの刺激はAGEの産出に拍車をかけ老化を早めるという。

 AGEは全身のコラーゲン線維に蓄積するが、目で確認できるのが皮膚だ。皮膚は表皮・真皮・皮下組織の3層でできていて、特にAGEがたまりやすく老化しやすい場所は、表皮と真皮を支えるコラーゲン線維であることがわかっている。

「ただ、表皮は1カ月余りで入れ替わるためにAGEの蓄積量が少なく目立ちにくいのですが、皮膚の奥底にあって主に肌の形を下から支える柱となっている真皮のコラーゲン線維は新陳代謝するのに平均14~15年かかる。それだけ真皮はAGEが蓄積しやすいため、老化が現れやすいのです。なお、顔は、紫外線などによる『酸化』と『糖化』が同時に起きる場所です。老化が目立つのは仕方がありません」

■フライドポテトは要注意

 抜け毛や髪の毛の質もAGEが関係するという。年をとっても若々しくいたい糖尿病の人は、健康な人以上に「酸化」と「糖化」に気をつける必要がある。

「日焼けやたばこに気をつけるのはもちろんですが、食べ物にも注意しなければなりません。AGEは毎日、少しずつ体内の化学反応によって生まれてきますが、食品にも少量含まれているからです。その多くは腎臓から尿とともに排出されますが、腎機能が弱っている人は特に多く残ってしまいます。だからこそ、糖質を減らし、AGEの含有量が少ない食品を取ることが大切なのです」

 AGEは、タンパク質とブドウ糖が結びつき高熱が加わると大量につくられる。具体的に言うと、唐揚げ、ステーキ、パンケーキ、焼きおにぎりなど。こんがりと焼き色がついた、おこげのできるような食べ物は、全身のタンパク質にたまって悪さをする。ほかにフランクフルトソーセージ、ベーコン、フライドポテトなどはAGEの含有量が多い食べ物だという。

「同じ食材でも調理の仕方によりAGEの量は異なりますが、高温で焼くものは気をつけましょう。とくにポテトを揚げた料理やお菓子はAGEの中でも発がん性が高く害が大きいアクリルアミドが大量に含まれています。注意が必要です」

 ちなみに牧田院長は現在70代だが、肌はプルプルして張りがあり、みずみずしい。夏場は日傘を差し、AGEが多く含まれる食品を避け、運動をするおかげだという。

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