近年、マダニが媒介する新興ウイルス感染症が話題になっています。
「オズウイルス」は、2018年に愛媛県でマダニの一種タカサゴキララマダニから世界で初めて見つかりました。昨年は厚生労働省が、茨城県内において心筋炎で死亡した70代の女性について、オズウイルスによる感染症と診断されたことを発表しています。この女性は、昨年夏ごろに発熱や倦怠(けんたい)感を訴えて病院を受診後に心筋炎で亡くなられたのですが、入院時に右足の付け根にマダニがかみついていたことが確認され、検査を行ったところオズウイルスによる感染症と判明したとのことでした。
オズウイルスに人が感染して発症、死亡したケースが確認されたのは初めてで、厚生労働省はウイルスの特徴や症状などについて引き続き調査や研究を行うこととしています。ちなみに疫学調査では、山口県、和歌山県、三重県、大分県、岐阜県、千葉県のイノシシ、サル、シカなどの野生動物がオズウイルスの抗体を持っていることが分かっています。つまり、この地域にはオズウイルスを持ったマダニが生息していることが推測されるのです。
ほかにもマダニからはさまざまなウイルスが見つかっています。2021年には、北海道大学が発熱や筋肉痛などを主徴とする感染症の原因となる新しいウイルスを発見し、「エゾウイルス」と命名されました。エゾリスやエゾシカと同じく北海道だからエゾウイルスというわけです。
エゾウイルス感染者は2014~20年の7年間で少なくとも7人が確認されており、いずれの方もマダニに刺された数日から2週間後に発熱や筋肉痛などを訴えていました。これまでのところ、エゾウイルス感染症による死者は確認されていませんが、エゾシカなど道内の野生動物がエゾウイルスの抗体を持っていることが分かっていて、ウイルスは北海道内に定着していると推察されています。
近年、解析技術の進歩によって世界各地のマダニからウイルスを含む新たな微生物が次々と発見されていて、マダニの中には未発見の病原体がまだ存在しているものと考えられています。今後も新たな病原体が発見されるかもしれません。
春から秋にかけてはマダニの活動が盛んになるので、草むらやヤブなどマダニの生息する場所に入る場合には、長袖、長ズボンを着用し、サンダルのような肌を露出するものは履かないといった対策が大切です。
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