4人に1人が該当する心臓の穴「卵円孔」は脳梗塞の原因に…再発予防にチェックすること

脳梗塞の原因はいくつかあるが…
脳梗塞の原因はいくつかあるが…

 脳梗塞の原因となりうる心臓の穴、「卵円孔」をご存じか? 4人に1人に見られるという。卵円孔は、心臓の右心房と左心房の間の小さな隙間のこと。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科准教授の原英彦医師が言う。

「卵円孔は胎児の時にでき、通常は生後すぐに閉じてしまうのですが、約25%の人は閉じずに開存しています。それでも9割以上は問題ありません。しかし、いくつかの条件が重なると、血の塊である血栓、主に足にできた血栓が血流に乗って卵円孔を通過し、そこから脳へ飛び、脳梗塞を起こしてしまうのです」

 事前に卵円孔開存の有無を調べ、閉じられればいいのだが、「4人に1人」かつ「9割は問題なし」ということを考えると、非現実的だ。

「重要なのは、血栓をつくる病気の治療や生活習慣の改善で、脳梗塞を起こさない。すでに起こしてしまった人では、脳梗塞の再発予防を徹底する。脳梗塞は再発しやすく、脳梗塞を起こした時点で卵円孔開存を調べ、もしそれが脳梗塞発症に関与しているならその治療が再発防止につながります」(原医師=以下同)

 ところが「卵円孔開存」の検査がスルーされているケースが珍しくない。脳梗塞は原因によって種類が分かれるが、卵円孔の検査なしに薬物治療が行われているケースがあるのだ。

「脳梗塞の原因はひとつとは限りません。明らかに原因がはっきりしている脳梗塞であれば、卵円孔の検査はなくてもいいでしょう。しかし、複数の原因が考えられるものは少なくありません。卵円孔のように心臓に原因がある脳梗塞もあるため、循環器と脳の専門医がタッグを組み、原因を突き止め、最善の治療を検討しなければならない。複数の原因が考えられる場合、どの治療を優先するかも重要な課題です」

■2019年から閉鎖術が保険適用に

 卵円孔開存があれば、その閉鎖術が行われる。欧米では1998年から実施されており、比較的安全な治療法だ。日本では2019年、ようやく保険適用になった。脚の付け根からカテーテル(管)を入れて心臓まで達し、専用のデバイス(丸い金属メッシュのディスク)を留置して卵円孔を塞ぐ。全身麻酔または局所麻酔で行われ、1時間ほどで終了する。

「複数の臨床研究で、薬物治療より卵円孔開存閉鎖術の方が脳梗塞の再発リスクが下がることが証明されています。2019年以前は血液サラサラの抗凝固薬や抗血小板薬を用いるしかなかったのですが、有効な治療法が保険適用で受けられるようになった今、卵円孔開存閉鎖術で再発リスクを抑えられる人は、そのチャンスを見逃さないでほしい」

 卵円孔開存閉鎖術は卵円孔開存のあるすべての人に適用されるわけではない。この治療を行う医療機関(https://pfo-council.jp/facility/)に相談を。

「脳梗塞の原因がわからないまま薬物治療を続けている人は、ぜひ卵円孔開存がないかを調べてください。一過性脳虚血発作(一時的に脳に血流が流れなくなる)も同様です。また卵円孔開存による脳梗塞は若年に多い。若年の脳梗塞で原因がはっきりしていない人は、早めに卵円孔開存の有無を調べるべきです」

 卵円孔開存は超音波検査で調べる。コツが必要だが、卵円孔開存の治療に慣れた医師では難しい手技ではない。

 Oさんは2年前、58歳の時、脳梗塞を起こした。救急搬送先の東邦大大橋病院で脳梗塞と卵円孔開存が見つかり、脳梗塞の治療とともに卵円孔開存閉鎖術を受けた。

「まさか自分の心臓に隙間があるとは思いもしませんでした。卵円孔の説明を受け、再発予防のためには、閉鎖術を受けないという選択肢はありませんでした」(Oさん)

 卵円孔開存による再発リスクは閉鎖術で抑えられたが、脳梗塞にはほかにも発症原因がある。そのためOさんは動脈硬化と高血圧の薬は服用しているものの、現在は健康な人とまったく変わらない生活を送っている。

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