急速な高齢化に伴い、先進諸国では認知症を患う人の数が増加しています。世界保健機関の推計によれば、全世界で約5000万人が認知症を患っており、2050年までに約3倍に増加すると予想されています。
認知機能の低下は、睡眠時間や食習慣などさまざまな生活習慣と関連していることが報告されています。特に、タンパク質を構成するアミノ酸は、認知機能の維持に重要な栄養素です。しかし、睡眠時間が長い人はタンパク質の摂取量が少ない傾向にあり、タンパク質の摂取不足はまた、認知機能の低下と関連しているとの報告もあります。
そんな中、睡眠時間やアミノ酸の摂取量と、認知機能障害の関連性を検討した研究論文が、高齢者医療に関するオープンアクセスジャーナルに、2023年10月11日付で掲載されました。
日本で行われたこの研究では、認知機能に障害がない60~83歳の623人が解析対象となりました。研究参加者に対して実施したアンケート調査や食事内容の記録から、睡眠時間および19種類のアミノ酸の摂取量に関する情報が収集されました。また、研究参加者に対して認知機能検査(30点満点中、27点以下を認知機能障害と定義)を行い、睡眠時間やアミノ酸摂取との関連性が解析されています。
平均で6.9年にわたる追跡調査の結果、中程度の睡眠時間(7~8時間)の人と比べて、長時間睡眠(8時間超)の人では、認知機能障害の発症リスクが41%、統計学的にも有意に増加しました。また、長時間睡眠の人では、アミノ酸の中でもシスチン、プロリン、セリンの摂取不足と関連していることも明らかになりました。論文著者らは「これらのアミノ酸が不足しないように食習慣に注意することが重要」と考察しています。
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