EXILEのATSUSHIさん公表…ダニに噛まれて発症する「ライム病」ってどんな病気?

キャンプの時は注意
キャンプの時は注意

 今年9月、EXILEのATSUSHIさんが罹患を明かした「ライム病」。カナダ人歌手のジャスティン・ビーバーさんも罹患を公表している。ライム病とはどんな病気なのか。兵庫医科大学皮膚科学の夏秋優教授に話を聞いた。

「ライム病は『ライム病ボレリア』を保有したマダニに刺されることで発症する感染症です」(夏秋教授=以下同)

 症状には、3つの段階がある。第1段階の「感染初期」は、赤い皮疹。刺されて数日から14日後に出現し、次第に拡大していく。特徴的な的状で、「遊走性紅斑」と呼ぶ。発熱や倦怠感、筋肉痛や関節痛を伴うこともある。

「この段階で薬剤の投与など適切な治療を受ければ、ライム病はそう恐れることはない病気です。しかし放置したり、間違った治療を受けたりすると、病原体が全身に広がる『播種期』に移行します。皮膚症状、神経症状、眼症状、関節炎など多岐にわたる症状が出て、症状だけからの確定診断が困難になります」

 さらに感染から年単位で時間が経過している場合、第3段階の「慢性期」となる。慢性髄膜炎、慢性脳脊髄炎、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎などを発症する。

 ライム病の早期発見・早期治療のためには、虫による感染症に詳しい皮膚科を探して受診したい。

■民家の庭でも刺される可能性がある

 マダニに刺されない対策をしっかり講じることも重要だ。

「マダニは主に山や河川敷などに生息します。ここ数年のキャンプブームで、私のところにマダニに刺された患者さんが急増しています。季節を問わず、屋外では肌を露出させないようにしてください。虫よけスプレーの使用も必須です。特に足元に念入りにスプレーすること。長ズボンを着用しても虫は足元から潜り込むので、油断しないでください」

 キャンプや山登りでは、正規の登山道を離れないようにする。道をはずれて草むらに入る際には特に注意したい。

「民家の庭でもマダニに刺される可能性があります。アウトドアの活動時と同様の対策を講じてください」

 マダニに刺されていることに気がついたら?

「皮膚科に行って除去してもらってください。自分で無理やり肌から引き剥がそうとすると、口部分が千切れて皮膚の中に残り、しこりになります。どうしても自分で除去するという場合は、先端のとがったピンセットでマダニの頭部をはさんで引き抜くようにしてください」

 マダニは人間や動物の皮膚に口器を刺して吸血を続け、腹部が膨れると自然に脱落する。しかし吸血期間は私たちが想像する以上に長く、3日から14日間に及ぶこともある。1週間以上マダニに血を吸われているのに、その存在に気づかないことも珍しくない。

「腰の辺りや膝の裏など目があまり届かない場所に吸い付かれれば、そう簡単には気がつきません。刺されてもかゆみなどの症状がないこともある。ある患者さんは、腕にマダニが吸い付いていて、しかしまさかマダニとは思わず『急にほくろができたんですが、大丈夫でしょうか?』と相談に来られました。拡大鏡で脚を確認し、『マダニですよ』と説明すると、びっくりされることもよくあります」

 なお、「マダニに刺される=ライム病発症」ではない。マダニの種類は国内では46種類以上いて、その中でライム病の病原体「ライム病ボレリア」を保有するマダニが生息するのは北海道と本州中部山岳地帯に限られている。病原体を持たないマダニに刺されても、ライム病は発症しない。

「ただ、マダニを介して罹患する感染症はライム病だけではありません。日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群、ダニ媒介性脳炎などもあります。すべてのマダニがこれらの病原体を保有しているわけではないとはいえ、マダニに刺されない対策は万全に講じるべきですし、何らかの症状が出たら速やかに皮膚科を受診すべきです」 

 日常的に被害を受けやすいダニといえば、ネズミに寄生し吸血するイエダニ、鳥に寄生するトリサシダニ、スズメサシダニ、ほこりの中に見つかるダニを捕食するツメダニがいる。夏、室内で刺されてひどいかゆみに襲われた経験を持つ人は結構いるだろう。

「イエダニやトリサシダニ、ツメダニは、マダニとは違い、ライム病の病原体を保有していません。ですから、イエダニなどに刺されてライム病になる、ということはありません」

 キャンプシーズンだ。アウトドアを楽しむ時はマダニのことも念頭に。

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