身だしなみはとても大切です。服装を含め「適当でも大丈夫でしょ」と考える方も少なくないかもしれませんが、身だしなみは初めて会った相手に対する第一印象を左右するほど大きな影響力を持ちます。
また身だしなみには、その人の精神状態が如実に表れることが多いともいわれていて、清潔感のある身だしなみや服装は、自身の精神衛生の向上にもつながります。つまり、自分自身の気持ちを上げたり、自分を大切だと思えるようになるには、まずカタチから入ってみることも大事なのです。
同志社大学の余語らが、20代の女性24人を対象にした研究(1990年)では、メークをすると自尊心や自己満足度が高くなり、化粧をプロにしてもらうと不安感が減り、声のトーンが高くなることが観察されています。
さらには、長崎大学の土居の「化粧と自尊心に関する研究」(2012年)では、若い女性を対象に、①普通の自分の顔②人工的に美しくした自分の顔③人工的に醜くした自分の顔──といった3パターンを見ているときの脳の活動を計測するという興味深い実験を行っています。
その結果、後側頭部で記録されるN250という脳波の成分の振幅が、③人工的に醜くした自分の顔に対して著しく増大するということがわかりました。N250というのは、刺激を提示してから1000分の250秒後に現れる脳波で、自尊心が低いほどこの脳波が増大します。
したがって、この実験結果は「本来の自己イメージよりも醜く劣化した自分の顔を見せられると自尊心が低下する」ということを示しているわけです。自分の外見と自尊心は大きく関連しているんですね。
外見を磨くということは何も女性に限った話ではありません。実は男性においても当てはまります。最近は男性でもメークをする方が増えてきていますが、自尊心を向上させるために化粧をするかと問われれば、多くの男性がハードルが高すぎると感じるのではないでしょうか。そこでおすすめしたい外見磨きが、ネイルの手入れです。
京都大学の平松らの研究(2011年)によれば、大学生15人に爪にマニキュアを塗ってもらい、どのような感情の変化があったかを調べたところ、緊張、疲労、落ち込みなどが若干減少すると示されました。
統計的に見ると、リラックスという点で大きな変化があったことも報告されています。マニキュアは鏡を見なくても自分の目に入ります。“目に入る機会が多いため、このような効果があるのでは”といった可能性も平松らによって指摘されています。
爪を磨いたり、オイルを塗ったりする──。これなら男性でもできるはずです。たったそれだけで「自分はきちんと身だしなみを気にしている」「外見を磨いている」という自尊心につながり、自分をポジティブにとらえられるようになる。身だしなみを美しくすることは、自尊心をアップしたり余裕をつくったりすることにつながるのです。
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