乳幼児の卵アレルギーの診断に役立つ「たまこな」って何? 乳幼児の食物アレルギー第1位

たまこな(本人提供)
たまこな(本人提供)

 近年、わが子の食物アレルギーを心配する親が増えている。乳幼児の10人に1人が食物アレルギーを抱えているといわれ、その中で最も多いのが6割以上を占める「卵アレルギー」だ。卵アレルギーの診断を円滑に行うための試験食の開発・製品化に関わった社会医療法人高槻病院小児科の榎本真宏氏に聞いた。

「食物アレルギーは乳幼児に多く、特に1歳児の約10人に1人の割合でみられ、原因食物として卵が一番多いことが知られています」

 食物アレルギーを発症する原因は、家族歴、皮膚バリアー機能の低下により原因物質が体内に入り込む経皮感作、先進国のような清潔な環境の方が起こりやすいという環境的要因が関係すると考えられている。アレルギー反応を起こすと、蕁麻疹、息苦しさ、腹痛や嘔吐の症状がみられ、場合によっては命に関わる恐れがある。リスク因子があってアレルギー症状が心配な場合は食物経口負荷試験での確定診断が望ましい。

 食物経口負荷試験は医療機関で医師の管理の下、アレルギーが疑われる場合に診断を確定させる、あるいはすでに確定していて安全に摂取できる量を測定するために実際に卵を摂取する検査法だ。

「これまで試験食は、病院によっては固ゆで卵、薄焼き卵を各自で持参するなど統一されてなく、検査結果が一定しないと問題視されていました。そこで、標準化された試験食の開発と普及が必要不可欠だとの考えから、アレルギー疾患の領域で世界的に有名な海老澤元宏医師と、卵を扱っている食品メーカーのキユーピー株式会社が長年共同研究を行っていたのです」

 食物経口負荷試験の試験食として今回製品化された「たまこな」は加熱全卵粉末で、「たまこな25(微量)」「たまこな250(少量)」「たまこな750(中等量)」の3段階に分けられている。市販もされているが、どれも医師の指示の下での使用が前提だ。乳幼児が食べやすいようにスイートポテト味やミックスフルーツ味などもあり、水やジュース、おかゆに混ぜて摂取する。

 現在、全国約180の医療機関で導入され、医師の許可があれば自宅での定量摂取にも使用できるという。

「食物経口負荷試験で陰性または判定保留の場合、私たちの施設では週3回以上、自宅で卵の負荷試験食を食べるよう指導を行います。食べているうちに治ってくる患者さんがいます。ただ、近年は共働き家庭の増加で自宅で毎日負荷試験食を準備するのが大きな負担だと耳にする機会が多くありました。たまこなの製品化によりご家族の負担が解消されたとの声が届いています」

榎本真宏氏(提供写真)
榎本真宏氏(提供写真)
早期の微量摂取で発症を8割予防できる

 これまで、卵の摂取は生後1年まで避けるよう考えられていたが、近年、アレルギーに対する考え方が変化している。2017年の国立成育医療研究センターの発表によると、卵を食べる時期を遅らせることがアレルギー発症の予防効果が高いのではなく、むしろ早期から微量(卵白0.1グラム)を食べ始めた方が卵アレルギーの発症を8割予防できるとされている。

「2019年に12年ぶりに改定された厚労省の『授乳・離乳の支援ガイド』では、生後6カ月から固ゆでした卵黄の摂取を始め、よりアレルギー反応を誘発しやすい卵白は後に回すよう明記されています。ただ、これも自宅で毎回調理し量を測って与えるのは手間がかかるので、手軽に摂取できる粉末を世に出したいと思っていました。『たまこな25』はそういった予防目的での使用も可能です」

 生後6カ月から離乳食として卵の摂取を始める場合、経皮感作を防ぐために湿疹があれば治療を事前に行う必要があるという。

 たまこなの場合、自宅で摂取する際は、アレルギー症状を引き起こさないためにも医師に指示された量を必ず守る。万が一、アレルギー反応が生じたら、皮膚の症状であれば抗ヒスタミン薬、過去にアナフィラキシーショックの経験があればエピペンが処方されるので、事前に医師に相談しておくといい。

「今月からは牛乳アレルギーに対する食物経口負荷試験食の『みるこな100(脱脂粉乳)』もご家庭で使用できるように販売を開始しました。お子さんの食物アレルギーが心配であればアレルギーの専門医に相談してください」

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