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薬膳の基礎知識である「五味」とは何か…酸・苦・甘・辛・鹹

酸味は口や咽喉の渇きを改善
酸味は口や咽喉の渇きを改善(C)日刊ゲンダイ

 10月25日付の本コラムで、「薬膳」を取り上げました。薬膳の基礎知識として、体を冷やす「寒・涼」と、体を温める「温・熱」の4つの性質で食品を分類する「四気」を紹介したのですが、もうひとつ押さえておきたい基礎知識として「五味」があります。

「五味」は、酸・苦・甘・辛・鹹(塩からい味)の5つの味を指します。薬膳的考えでは、酸味は肝に、苦味は心に、甘味は脾(胃腸)に、辛味は肺に、鹹味は腎にと、それぞれ通じると考えられており、各臓器の機能を良くするために「五味」の中から食品を選ぶことはよくあります。

 また、もしもそれらの臓器に何かの異常があれば、各臓器に通じる味の飲食物を好んで食べたがる傾向があるともされています。それだけでなく、そもそも5つの味にはそれぞれの効能や効用があると考えられています。次に五味が持つ効能と代表的な食べ物を紹介します。

【酸味】唾液などの体液の分泌を促し、口や咽喉の渇きを改善したり、汗かき・慢性下痢・頻尿や夜尿症など体液が漏れる症状に働きかけたりします。食べ物としては梅干しや、また下痢止め剤として青梅を干してから黒く燻製した「烏梅」を用いた烏梅湯などが知られています。

【苦味】解熱や解毒作用があり、できものや便秘や湿疹などに用いられます。苦味の強い夏野菜であるゴーヤーが有名ですが、中でもタンポポなどはできものやニキビなどの対処に用いられています。

【甘味】甘味には、気を補う作用、胃腸を調和し痛みをやわらげる作用があり、疲れている時や胃腸の不調がある時におすすめ。軽い胃痛や腹痛にも用いられています。食べ物としては蜂蜜、ナツメなどがあります。

【辛味】体を温め気の巡りと血の巡りをよくする働きがあり、風邪の時や冷え症、ストレスや血行不良に用いられます。食べ物としてはショウガ、ネギ、辛味大根などがあります。

【鹹味】しょっぱさのこと。硬いものを軟らかくしたり結んだものをほぐしたり、大便を下す働きがあるため、便秘、良性の結節や腫瘍などにも用いられます。食べ物としては昆布、ワカメなどがあります。

 五味は、個々の味のみならず、組み合わせ(例えば、酸味と甘味)でも用います。組み合わせの仕方によって、新しい効能や効用、適用が生まれます。

王瑞霞

王瑞霞

日本医学柔整鍼灸専門学校鍼灸学科専任教員。中国山東中医薬大学卒業。中国北京中医薬大学大学院修了。日本大学医学部医学博士。鍼灸師、登録販売士。

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