冬に旬を迎え、特に大晦日やお正月などの特別な行事で食されることも多いフグ。その歴史は古く、日本での記録は万葉集にもその記載があるほどです。フグが一般に食されるようになったのは、江戸時代後期から明治時代にかけてです。
特に江戸時代後期、隅田川や江戸湾の漁獲が盛んになり、フグの供給量が増えました。このころから、「ふぐ師」と呼ばれるフグを調理する専門家が登場し、フグを安全に食べられるようにするための技術や知識が急速に広まってきたそうです。
フグはその毒性から、「鉄砲(テツ)」という言葉で隠語化され、フグ料理の刺し身、水炊き、湯引きにも「てっさ」「てっちり」「てっぴ」などという言葉があてられます。フグの産地の下関では、高級魚=福とかけて「ふく」と呼ぶこともありますが、毒に当たることを連想させるガンバ(棺桶を意味する)、ジュッテントン(十転倒から派生)、キタマクラ(縁起が悪い北枕)という地域もあるそうです。フグの危険性や特性を伝えるための食文化、大変興味深いですね。
そんなフグにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。まずは糖質、脂質、タンパク質を代謝するために欠かせないナイアシンです。不足すると取った栄養素が上手に分解できず、体内に体脂肪や内臓脂肪として蓄積されてしまう危険性があります。また、アルコールを分解する際にもナイアシンが使われます。二日酔いや悪酔いにならないためにもお酒のおつまみなどに利用するのもよいでしょう。
その他にも、ナイアシンの摂取で精神的な安定やうつ病、不眠症の予防効果があるとした論文もありますし、冷え性や肩こりの改善などに役立つ報告もあります。
ナイアシンと同様に糖質、脂質、タンパク質を代謝する手助けをするビタミンB6も豊富に含まれます。夜は脂質の代謝が悪くなる時間帯ですので、高タンパクでありながら、低カロリーであるフグはまさに夕飯や晩酌向きの食材と言えるでしょう。
また、骨の健康に役立つビタミンD、貧血予防に役立つビタミンB12も多く含まれます。紹介した栄養素はフグ1食(約80グラム)で十分量を摂取することも可能なので、ぜひこれからの季節にいかがでしょうか。
時間栄養学と旬の食材