教えて放射線治療 ドクター黒﨑に聞く

がん治療計画とはどのようにして作られるのか…キャンサーボードで検討

がん治療計画の提示はキャンサーボード後がスタンダード
がん治療計画の提示はキャンサーボード後がスタンダード

 前回、肺がんを疑われるケースでのスタンダードな診察の流れを説明しました。呼吸器内科あるいは呼吸器外科を受診し、気管支鏡による生検でがんを確定させたうえで、CTなどで病期診断を行うというものです。

 本来であればこうした検査を行ったのち、「キャンサーボード」(手術、放射線、抗がん剤などの専門知識のある医師、その他の専門医、医療スタッフらが参集し、患者の症状、状態および治療方針などを意見交換・共有・確認などを行うカンファレンス=話し合いのこと)で検討して、治療方針を患者さんに提示します。ただ、ガイドラインや患者さんの希望、または緊急性がある場合は、キャンサーボードで討論する前に方針が定まるケースもあります。あまりいいこととは言えませんが、私が働いてきた病院の多くは初回治療前にキャンサーボードで討論した症例の割合は少数でした。ただ、がん診療拠点病院などの報告では、治療前にキャンサーボードで討論したケースの割合の報告を求められます。

 実際に放射線治療の外来を受診できるのはこの後の話となります。近年は集学的治療として、抗がん剤と放射線治療の組み合わせなど、さまざまな連携が取られる場合もあります。なので、放射線治療の立場としては、いつから抗がん剤が始まるので、その日までに準備をしなくては……ということも多々あります。

 なお、病院によっては放射線治療科は、直接、他院からの紹介を取っていません。肺がんなら前もって同じ病院の呼吸器内科(外科)を受診して、そこで放射線治療科の予約を取るというステップを踏ませる病院も多いです。その理由は多くの病院の放射線治療科では病棟がないからです。私個人は無駄なステップと思っているので江戸川病院ではダイレクトに放射線治療科を他院から受診できるようにしています。これで1回のみとはいえ患者さんは通院回数を減らすことができます。

黒﨑弘正

黒﨑弘正

江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

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