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【ミカン】血行促進効果で手足の冷えや凝りを改善する

体重増や体内時計の乱れの抑制も
体重増や体内時計の乱れの抑制も(C)日刊ゲンダイ

 ミカンは日本で非常に人気のある果物のひとつで、一般的に「ミカン」と呼ばれるのは、日本人にとって最も馴染み深い品種である温州みかんではないでしょうか。中国の温州府にちなんで名付けられたのに、当の温州地方ではミカンが栽培されていなかったという面白い話も。

 約400年前に鹿児島県の長島町で突然変異によって誕生し、当初は種がないことから縁起が悪いとされたミカンは、初めは九州の一部でしか栽培されませんでした。全国的に栽培されるようになったのはなんと明治時代から! 意外と最近のことなんですね。

 日本では和歌山県や愛媛県、静岡県で主に生産されているのは有名ですが、それ以外の地域でもオリジナリティーあふれたさまざまなミカンの食べ方がなされています。たとえば、焼いて食べる「焼きミカン」、凍らせた「冷凍ミカン」、お風呂に入れて楽しむ地域も存在します。愛媛県の一部地域では、学校給食において「ミカンごはん」として、ミカンジュースを炊飯に用いたりする珍しい炊き込みご飯のメニューが食べられているそうです!

 また、ミカンの皮を乾燥させた「陳皮」は古来、生薬として疲労回復、手足の冷えや肩こり、腰痛の改善に効果があるとされます。これは、ミカンの袋やスジ、皮に多く含まれるヘスペリジンが血行促進作用が強いことも大きいと思われます。入浴剤として利用されたりするのはとても理にかなっているといえるでしょう。

 その他の栄養素の研究も盛んに行われています。ミカンに含まれるビタミンCはストレスを和らげるホルモンの合成を助ける効果が高いこともわかっていますし、このビタミンCに加えて、先ほどのヘスペリジンやβカロテン、ペクチンなどの成分は、血中の悪玉コレステロールを減少させ、脂質異常症に効果的な可能性も期待できることが報告されています。また、温州みかんから抽出されるノビレチンは抗酸化や抗炎症作用があることが知られています。このノビレチンを高脂肪食と一緒にマウスに与えると体重増加を抑えると同時に体内時計の乱れを抑制することがわかっています。高齢者は特に朝早く目覚めてしまい、日中や夕方に眠くなるケースが多いようですので、朝にミカンを食べることで改善効果が期待できますよ!

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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