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生き延びる可能性が低い胎児も中絶不可…テキサス州の判断に衝撃

不妊の可能性など母体にも影響があるといっても中絶は認められない
不妊の可能性など母体にも影響があるといっても中絶は認められない(C)iStock

 生き延びる可能性が極めて低い胎児を妊娠した女性に対し、テキサス州の最高裁判所が「中絶は認めない」という判断を下し、全米に衝撃が走っています。

 この女性は31歳のケイト・コックスさんです。

 ケイトさんがみごもった赤ちゃんは、非常に稀な染色体異常によるエドワーズ症候群と診断されました。生きて生まれる可能性が極めて低く、生後も重い疾患により1歳までに9割が死亡するとされています。

 妊娠を続けると母体にも影響し、将来の不妊につながる可能性もあるといいます。

 ケイトさんは妊娠20週間の間に、3回にわたり救急救命センターで治療を受け受けました。

 このコラムでは何度もお伝えしていますが、アメリカは2022年の最高裁判断により、人工妊娠中絶の権利は覆され、州ごとの議会の判断に委ねられました。その結果、現在14の保守州で事実上禁止とされていますが、テキサス州もその1つです。

 そこでケイトさんは、テキサス州を訴える決心をしました。地裁ではOKの判断が出たものの、州務長官が上告し最高裁で覆されてしまいます。

 ケイトさんは上告された直後に、中絶が可能な他州で手術を受けたと伝えられています。

 テキサス州では、中絶は犯罪とされるだけでなく、中絶を「幇助(ほうじょ)」した者、つまり医療者に対し、民間人が民事訴訟を起こすことも認めています。

 母体の命の危険を伴う場合は許されることになっていますが、法の条項が曖昧なために、判断を下すことを恐れる医師がほとんどです。

 裁判所は今回州の医療委員会に対し、医療緊急例外についてのより詳しいガイダンスを提供するよう求めました。

 現在アメリカ人の8割以上が、無条件、または条件付きで、人工妊娠中絶は合法であるべきと考えています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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