だからあなたの頭痛は治らない

頭痛の痛みのパターンが変わったら甲状腺機能の異常を疑え

甲状腺機能の異常が頭痛を増悪させることがある
甲状腺機能の異常が頭痛を増悪させることがある

 あまり知られていないかもしれませんが、甲状腺機能の異常が頭痛を増悪させる、もしくは、頭痛の性状を変化させることがあります。

 甲状腺機能にはどんな疾患があるのか。ひとつは「バセドー病」という甲状腺機能亢進症。甲状腺の働きが異常に活発になることで、甲状腺ホルモンが過剰に産生され、文字通り体内の代謝が亢進する。そのため、例えるなら常時走り続けているような状態になってしまうんですね。

 症状は人によってさまざまですが、典型的なものとして体重減少や動悸、指が震える、極端に暑がりになる人も。精神的なものでは、イライラが治まらなかったり常に落ち着きがなくなったりします。片頭痛持ちの患者さんがバセドー病になった場合は、脳の代謝も亢進するあまり、以前よりも激しい痛みを伴う片頭痛が起きることがあります。

 次に「橋本病」。これはバセドー病とは逆で、甲状腺機能が低下することで甲状腺ホルモンの分泌も低下してしまう疾患です。こちらも人により症状はさまざまですが、疲れやすくなり、体がむくむ、極端に寒がりになり食欲がなくなることも。

 また、眠気に襲われやすく、ボーッとして活動的に動けない。抜け毛や皮膚の乾燥に悩まされる人もいます。

 片頭痛持ちの人が橋本病になった場合は、頭痛の変化が見受けられる。ズキンズキンと脈打つような片頭痛独特の痛みから、どーんと重さのある緊張型頭痛様の頭重感になっていくことが多いです。

 甲状腺機能異常は女性に多い疾患です。先日はこんなことがありました。当クリニックを初めて受診した40代の女性の患者さんの話です。長く片頭痛に悩まされているという相談で脳波の検査、脳のMRI検査、そして頚部エコーを行いました。すると、首の左に腫瘍があるとわかったのです。患者さんいわく「10年以上前からあるもので、当時のクリニックでは良性といわれた」と。ですが時間も経過しているため、詳しい検査をした方がいいと思い、知り合いの内科や内分泌内科を紹介しました。

 結果、大きさから見て腫瘍は特に問題はなかったのですが、採血検査で橋本病の抗体を持っているとわかったのです。現在は甲状腺から分泌されるホルモン量の減少は見られないので、まだ発症していない状態。今後は腫瘍が大きくなっていないかを調べるためのエコー検査、また、橋本病が発症していないかの採血検査を1年に1度行うことになったそうです。

「最近、頭痛の痛みのパターンが変わったな」と感じる方は、甲状腺機能に異常を来している場合もある。気になる方はまず頭痛の専門医に診察してもらい、しかるべき検査を。診察の際には必ず「頭痛の性状の変化」も伝えるようにしましょう。

清水俊彦

清水俊彦

東京女子医大脳神経外科客員教授。「汐留シティセンターセントラルクリニック」の頭痛外来には全国から患者が訪れる。

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