認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

物忘れや無気力の症状は「甲状腺機能低下症」のせいかもしれない

写真はイメージ

 甲状腺は、のどぼとけの下にあるチョウが羽を広げたような臓器。ここでは甲状腺ホルモンというホルモンが作られており、血液によって脳、心臓、肝臓、腎臓などさまざまな臓器に運ばれていきます。

 この甲状腺ホルモンの重要な働きが、体の新陳代謝を活発にすること。血液中の甲状腺ホルモンの量が少なくなり、必要な働きができなくなった状態を「甲状腺機能低下症」といいます。

 症状としては一般的に、疲労感、むくみ、皮膚乾燥、寒がり、体毛の脱毛、体重増加、便秘、傾眠、月経異常など。甲状腺機能低下症の症状は徐々に出てくる上、軽度のうちは目立った形では出てこないこともよくあるので、本人も、周囲も気づかないことは珍しくありません。

 そして本連載でみなさんに知っていただきたいのは、甲状腺機能低下症には、認知症と似た症状もあるということです。それが記憶障害や思考力低下、無気力さです。徐々に物忘れがひどくなったり、ぼーっとするようになったり。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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