正月に食中毒を起こさない! 「日本食中毒防止協会」専務理事が指摘する対策3原則

お正月にはやっぱりお重のお節料理
お正月にはやっぱりお重のお節料理

「お節料理は砂糖や塩をしっかり使っているし、火を通したものばかりだから大丈夫」などと考えていないか?

「砂糖、塩を使っていようと、加熱していようと、細菌は生育に最適な条件が揃うと爆発的に増殖します。食中毒とは無縁ではありません」

 こう指摘するのは、「日本食中毒防止協会」専務理事の中島考治さん。

 食中毒対策の3原則は「つけない」「増やさない」「やっつける」だ。

【①つけない】

「手洗いを徹底する。『当たり前のことを言われている』と思われるかもしれませんが、十分にできていないケースが散見されます」(中島さん=以下同)

 指先だけをチャチャチャッと洗っていないだろうか?

「その洗い方では、例えばウェルシュ菌(善玉菌の一種)は落ちません。健康な人や動物の腸内などに生息している細菌で、熱に強く、100度で1時間加熱しても生き残る。家庭料理ではカレーやシチューなどの煮込み料理の中に潜んでいて、50度前後に冷めると増殖し始めます。ウェルシュ菌はトイレで大便をした後、手についたりするのですが、実は指先より手のひらにたくさんついている。指先だけ洗って調理すれば、食品にウェルシュ菌が付着してしまいます」

 せっけんを用いて、手首まで念入りに洗う。これが「つけない」ための洗い方だ。さらに、まな板や包丁などの調理器具は、使用の都度、きれいに洗うこと。

【②増やさない】

「人の2~3割が保菌しているといわれる黄色ブドウ球菌は、25度以上で増殖し、増殖する時に毒素を出します。黄色ブドウ球菌の毒素は100度、30分間の加熱でも分解されません」

 黄色ブドウ球菌を持っている人が餅を触ると、餅に細菌が付着。暖房が効いた部屋に放置すると黄色ブドウ球菌が短時間で爆発的に増加し、プクーッと膨らむまで焼いても、雑煮で煮込んでも、毒素はそのまま。

「ポイントは、『食中毒を引き起こす細菌は、種類によって増殖適用条件が異なる』と、しっかり認識すること。黄色ブドウ球菌は20度以下で増殖を防げますが、米などの穀物につくセレウス菌は4度以下でないと増殖を防げない。食品にどの細菌が付着しているかは、見た目では分かりません。黄色ブドウ球菌だけなら冷蔵庫でもいいが、セレウス菌対策まで考えると、調理後、速やかに冷凍庫で保管するべき」

 なお、餅つき大会での集団食中毒は複数報告されている。あるケースではあんこを作る際、小豆に砂糖を加えて煮詰めるまで1日常温状態に。その間にセレウス菌が増殖したためとされている。

【③やっつける】

 加熱しても生き残る細菌がいるため万全ではないが、それでも「加熱」は基本。調理器具は定期的に熱湯消毒をする。家庭での食中毒対策に取り組む傍ら、念頭に置いておきたいのは、「調理のプロがいる飲食店でも、食中毒対策は万全ではない」という点。

「2000年以降、全体の食中毒件数は減っているのですが、飲食店での件数は増えています。日本の食中毒を撲滅するには、飲食店の注意力がカギと考えています」

 発生件数が多い食中毒の原因菌として、カンピロバクター菌がある。ほとんどが鶏肉の加熱不足によるもの。

「じつは、カンピロバクター菌の食中毒の大半は飲食店で起こっています。2019年の調査では、飲食店での発生率が約85%でした」

 スーパーで買ってきた鶏肉を生で食べる人はいないだろう。しかし飲食店だったら? 「朝締めで鮮度抜群」のうたい文句で鳥刺しが出ていたら、注文しないだろうか? 

「スーパーの鶏肉も飲食店の鶏肉もカンピロバクター菌の汚染率は同じ。むしろ『朝締め』はカンピロバクター菌が元気でより危険と言えます」

 要は、「飲食店だから安心」とやみくもに思い込まないこと。食中毒の正しい知識を持って、2024年も食べることを楽しもう。

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