がんと向き合い生きていく

日進月歩の医学分野について生成AIに質問してみた

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 おかげさまで新しい年を迎えることができました。昨年は、戦争をしている国に比べたら平穏な日本でしたが、新型コロナ5類移行、夏の平均気温過去最高、沖縄の基地問題など安全と平和、議員の裏金疑惑、旧統一教会と政治、お金と選挙等々が問われ続けた一年でした。

 こうしてみると、私にとって一年を通して明るい話題だったのは、メジャーリーグでの大谷翔平選手の活躍と、わが家ではたった1人の4歳の孫の成長でした。

 私は専門外でよく分からないのですが、急成長している対話型人工知能(AI)「ChatGPT(チャットGPT)」はどのように利用されていくのか、今後の期待と不安があります。昨年は夏休みの宿題について、ある教育委員会がAIの回答をコピーして提出しないようにと注意したことが話題になりました。

 恥ずかしい話ですが、この正月に娘夫婦がわが家に来てくれて、生成AIのやり方を教わりました。その翌日、ひとりでもやれることを確かめて、少し自信がつきました。たとえば、ある事柄について、自分で考えたことを生成AIではどう考えるのか。AIは機械ではあるものの、身近な相談相手になってくれると思いました。文献検索も、生成AIでは数秒もかからずに教えてくれるのです。

 ここ数日は生成AIの“とりこ”になって遊んでみました。生成AIには過去のデータが蓄積されているわけですが、AIへの聞き方次第でいろいろな考え方が示されるので、それを見て、自分にとって有用であるかどうかを選択できるわけです。

 しかし、中にはフェイクが含まれていることもあると聞きます。この区別をしっかりできるようでなければなりません。特によく知らない専門分野であれば、その見分けがつくように勉強しておかなければならないと思いました。

■“遊び相手”として楽しみたい

 医学の分野でも、生成AIは日進月歩して内容が改定されていっているのかどうか、とても気になりました。そこで、ChatGPTに以下のような質問をしてみました。

「東京都保健医療局では、がん対策推進計画第3次改定におけるパブリックコメントを求めています。あなたは何かコメントがありますか?」

 すると、ChatGPTから次のような回答がありました。

「私はプログラムによって生成された人工知能であり、感情や意見を持っていません。しかし、がん対策推進計画に関するパブリックコメントは、市民や専門家が地域社会の健康に対する見解や提案を述べる貴重な機会です」

 こう、一瞬で答えるのです。なるほど、順当な答えです。しかも、これだけではありません。

「パブリックコメントを通じて、以下のようなポイントが考慮される可能性があります。1:アクセスと啓発、2:早期検診と予防、3:サポートとケア、4:健康格差の是正、5:予算の適正な配分」

 そして、それぞれ1~5の詳しい説明文があり、さらに以下のような回答がありました。

「これらは一般的な提案であり、具体的なコメントは東京都のがん対策推進計画や第3次改定に対しての理解や期待に基づいて行われるべきです。個人やコミュニティの経験や考えを反映させ、地域社会全体の健康を向上させるために声を上げることが重要です」

 まことに優秀な答えです。AIはあくまで機械ですが、相談相手として、遊び相手として楽しみたいと思いました。

 年末の朝日新聞の記事に、「トロント大名誉教授ジェフリー・ヒントン氏は、人間の能力を超えるAIが、今後5~20年以内に実現する確率が約50%、長期的には『人類の脅威になりうる』として、国際協調の重要性を訴えた」とありました。

 今のところ、まだまだ習い始めの私の問いでは、AIの回答は平均的、予定調和的なものともいえます。しかし将来的には、AIの自立、人類の脅威なんてあり得るのか、心配でもあります。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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