「これから16回目の抗がん剤治療です」
今月11日、自らのブログにこう記したのは、女優の古村比呂さんです。医師に子宮頚がんの再発を告げられたそうで、改めて抗がん剤治療に臨むといいます。
読者の中には、16回に及ぶ闘病の長さに驚かれる人もいるかもしれません。しかし、子宮頚がんを組織で分けたとき、8割程度を占める扁平上皮がんは、比較的抗がん剤が効きやすいタイプです。再発や転移があってもうまく治療を続けて、古村さんのように前向きに生活されている方は決して珍しくありません。
進行や再発した子宮頚がんで使用される抗がん剤は研究が進み、複数の薬剤を組み合わせるのが主流になっています。一般にはタキサン系製剤とプラチナ系製剤を重ねる組み合わせで、「パクリタキセル+シスプラチン」や「パクリタキセル+カルボプラチン」などがよく知られます。
最近は、抗がん剤に加えて分子標的薬を併用する組み合わせも開発されました。最新の薬の上乗せによって、延命効果が認められる一方、見逃せない副作用も報告されているので、分子標的薬の上乗せについては注意も必要です。
古村さんは、こうした治療を適切なタイミングで受けることで、元気に頑張ってらっしゃるんだと思います。ブログには息子さんとのやりとりや動画編集に精を出したことなど生活を楽しむ様子がつづられています。
実は古村さんのようなことは決して珍しくありません。がんの種類やタイプによっては、抗がん剤がよく効いて、長生きできます。
たとえば競泳の池江璃花子さんは2019年に白血病であることを告白しましたが、抗がん剤治療の末、東京五輪に出場したことは世界的なニュースになりました。白血病は大きく4つのタイプに分けられ、そのうち急性リンパ性白血病の治癒率は8~9割。そのうち7割近くが抗がん剤で治ります。
女優の南果歩さんは17年の乳がん啓発イベントに参加した際、自らのステージ1の乳がん治療について「ハーセプチンという抗がん剤治療をストップし、抗女性ホルモン剤の投薬もストップしています」と語っていました。
この治療の組み合わせから分かるのは、乳がんの遺伝子タイプのうちルミナルBというタイプです。これは、分子標的薬のハーセプチンも、ホルモン剤も効きやすい上、乳がんステージ1の再発率は10%。9割は再発しないわけですから、治療をストップする選択肢も十分ありえます。
抗がん剤治療や分子標的薬などがんの薬物治療はここまで進歩していますが、自分が薬物治療に効くタイプであることを選ぶことはできませんから、まずは早期発見を心掛けて、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頚がんについては、がん検診を受けることが大切です。