介護の不安は解消できる

離れて暮らす認知症の親の服薬管理はどうすべき?

薬剤師の松田宏則氏(提供写真)
薬剤師の松田宏則氏(提供写真)

 高齢になるにつれ、処方される薬の種類が増えていきます。実際、厚労省によると、75歳以上の患者さんの4割は、5種類以上の薬を処方されているといわれており、薬の飲む種類、量や回数が多いほど間違いが起こりやすくなります。特に認知症の患者さんでは記憶力の低下から薬を飲み忘れたり、反対に服薬したことを忘れて重複して飲むなどの飲み間違いが生じやすくなり、それを防ぐための「服薬管理」が大切となってきます。

 例えば、アルツハイマー型認知症があり睡眠薬を服用中の80代の患者さんは、布団に入ってもなかなか寝付けないのは睡眠薬を飲んでいないからだと思い込んで、何度も飲んでしまったのです。睡眠薬には筋弛緩作用もあるので、用量を守らないと次の日にも眠気やふらつきなどが続いて転倒するリスクが高くなります。

 ほかにも、認知症で脳梗塞の既往歴がある方が血液をサラサラにする抗凝固薬を飲み忘れると、脳梗塞の再発率が高くなったり、糖尿病の患者さんが経口血糖降下薬を誤って重複して飲んでしまうと、薬が効きすぎて低血糖になり意識障害を起こしやすくなる危険があります。

 薬は逆から読むと「リスク」というように、決められた量や回数などを間違えると大変危険なものなのです。

 そういった認知症患者さんに対して有効な対策が、薬剤師による「居宅療養管理指導」です。

 通常、病院で処方された薬はご自身で薬局に行き受け取りますが、認知症かつ独居の場合、自宅で自己管理するのが難しいことから、居宅療養管理指導では、薬剤師が直接患者さんの自宅を訪問して残薬の有無など服薬状況を確認し、他科を受診していれば処方箋を一元的に管理して自宅に届けたり、薬の一包化を行います。その際、管理しやすいように1カ月分ではなく1週間分などに小分けにしてお薬カレンダーにセットしています。

 また、嚥下機能が低下している患者さんでは、錠剤をうまくのみ込めなかったり、気管支に入ると誤嚥性肺炎を発症する危険性が高くなります。居宅療養管理指導に伺った際、飲みづらさがないか確認し、誤嚥の可能性があれば、それを防ぐために錠剤を粉砕したり、液状シロップ剤への変更を医師に提案しています。

 服薬の問題は、ときに命に関わります。飲み忘れや重複があれば、担当のケアマネに相談し、居宅療養管理指導を行う薬剤師を紹介してもらうとよいでしょう。

▽松田宏則(まつだ・ひろのり) 福岡大学薬学部卒業後、有限会社杉山薬局下関店(山口県下関市)勤務。主に薬物相互作用を専門とするが、服薬指導、健康運動指導などにも精通している。書籍「薬の相互作用としくみ」「服薬指導のツボ 虎の巻」、また薬学雑誌「日経DI誌(プレミアム)」「調剤と報酬」などの執筆も行う。

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