日本版「足病医」が足のトラブル解決

糖尿病のフットケアは何から始めればいいのでしょうか?

冬はストーブの前で就寝してやけどする人も…
冬はストーブの前で就寝してやけどする人も…

「糖尿病性足病変」の患者さんが足の切断を避けるには、早期に足病変を発見し、適切なフットケアを行う必要があると前回お話ししました。その際、血糖コントロールはもちろん、病院で足病変による足の切断リスクを確認してもらい、切断を防ぐには日頃からどういったフットケアを行うべきか、医師や看護師から指導を受ける必要があります。

 糖尿病性足病変の場合、神経障害による知覚の低下から足のケガになかなか気付かず放置して最悪のケースでは壊疽に至ります。気付いたときにはすでに手遅れの状態にならないよう、まずは毎日、足の指の間や足の裏、かかとの状態をくまなく観察し、傷がないか、変形や変色がないか、隅々まで細かくチェックしてください。その際、体が硬く自分で確認が難しければ鏡を用いたり、視力が低下している人であれば家族に協力してもらいましょう。

 とりわけこれからの季節に気を付けたいのが、「やけど」です。毎年冬の時季になると、寒いからといってストーブの前で寝て、足をやけどして来院される糖尿病の患者さんがいらっしゃいます。中にはつま先から足首のあたりまで真っ黒に焦げた状態で受診される患者さんもいて、話を伺うと「朝まで一度も起きることなく、ストーブの前で熟睡していた」と言うのです。神経障害によって温度覚が鈍り知覚が低下すると、熱さだけでなく痛みも全く感じなくなるためです。

 また、外出時に寒いからと使い切りカイロを直接足に貼ったり、靴の中に入れる方がよく見られますが、これは低温やけどの原因になります。使い切りカイロを貼っただけで足が腐ってしまった患者さんを診ているので、糖尿病性足病変の方の下肢への使い切りカイロの使用は禁忌です。

 入浴時のお湯の温度も、フットケアではとても重要です。お湯によるやけどを防ぐために、設定温度はなるべく低い温度(37度ぐらい)にしてください。また、特に足の指の間は白癬症になりやすいのでせっけんで丁寧に洗ったのち、水気をよくふき取りましょう。強くこすると傷の原因につながるので優しく押さえるようにして、拭き終わった後は完全に乾燥させるのが重要です。

 ただ、皮膚が過度に乾燥した状態が続くと、亀裂が入ってそこから細菌に感染しやすくなるのでクリームを塗り、保湿を行ってください。

 糖尿病性足病変では、神経障害によるやけどだけでなく、動脈硬化で血流が悪化していると一度できた傷が治るまでにかなりの時間を要します。さらに免疫力の低下によって化膿し、壊疽を起こしやすい。まずは自分の足の状態を把握し、感染のリスクになる原因を徹底的に排除することが足の切断を予防する基本といえます。

田中里佳

田中里佳

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

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