病気と共に生きていく

今の自分が私自身だ!常に堂々と自分らしく生きていきたい

松本さんの作品。別の作品では「アッヴィアートプロジェクト」の審査員賞受賞
松本さんの作品。別の作品では「アッヴィアートプロジェクト」の審査員賞受賞(提供写真)
松本彩子さん(47歳)=慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)

 CIDPの中でも、私の程度は非常に悪い方。手足の感覚はなく、触っているものが硬いのか柔らかいのかがわかりません。担当医に「足を切って義足にしてほしい」と本気で頼んだほど足が痛く、家でも就寝時以外、お風呂に入る時も靴を履いています。

 全身に力が入らず、ひどい時は立ち上がることができない。箸もスマホも持てませんし、衣類の脱ぎ着や洗髪もできない。こうなると入院しかなく、1年に1度は体調が悪化し、入院しています。

 発症当初は、病気のことはなるべく人に言いたくありませんでした。杖も隠していたし、薬の副作用で太ってしまった自分がすごく嫌でした。しかしある時から、「今の私が私自身だ!」と思うようになったんです。杖だって、3本目の足として、自分のスタイルに取り込めばいい。常に堂々と自分らしく生きていきたい。娘に弱いママと思われたくない、と。治らない病気との付き合い方は、note(https://note.com/saiko_note)にアップしているので、よかったら読んでください。

 娘も今年10歳。両親の手を借りながらも、夫と子供3人で暮らしています。病気によってできないことはあるものの、それらのできないことを少しでもできるようにするよう、お掃除ロボット、食洗機、全自動洗濯機、乾燥機など機器をいろいろとそろえています。娘の学校行事も、もちろん参加しています。本当は体調が悪い時もあるんですが、それを表に出さないようにして……。ただ、帰宅するとすぐに横になっていますね。夫も娘も、私ができること、できないことが何かを理解してくれています。

 実は、起業のための準備をしているんです。私は今、車椅子ユーザーですが、そうなってから、健常だった頃には難なく経験できたことが、難しくなってしまいました。若い世代の車椅子ユーザーを考えた時、面白そう、やってみたいといった好奇心も、かなえられないことが多々あると思う。例えばそのひとつが、私自身も経験のある飲食店アルバイト。設備、衛生面、物理的問題から、車椅子のウエーターを雇うのは難しい。

 それなら、車椅子でも調理や接客ができる店をつくろうじゃないか。そのためには、それ専用の車椅子の開発も必要──。企画書を作成し、応援してくれる企業を現在探しているところです。障害があって車椅子生活を余儀なくされている方々が、一般社会で、一般的に行動することをサポートする会社づくりを目指しています。

■慢性炎症性脱髄性多発神経炎 末梢神経に炎症が起こり、「手足の力が入りにくい」「感覚がわかりにくい」「しびれる」などをきたす病気。はっきりとした原因はわかっていない。ステロイド療法、免疫グロブリン療法、血液浄化療法が行われるが、治療後も再発と寛解を繰り返したり、慢性に進行したりすることがある。

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