一生見える目をつくる

近視の子供が増加…外遊びで太陽光を浴びると進行予防になる

近視の多くは学童期に発症
近視の多くは学童期に発症

 はじめまして。眼科医の荒井宏幸です。私は神奈川県にある「クイーンズ・アイ・クリニック」の院長をしており、専門は視力矯正治療です。

 この連載では目の悩みや病気、症状、治療方法などをお伝えしていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 最初に取り上げるテーマは「子供の近視」です。私のところにもマスコミの方が取材に来られて「子供の近視は増えていますか」とよく質問されますが、答えはやはり「イエス」なんですね。私が眼科医となった33年前と比較しても、かなり増えているなという印象。当クリニックにも子供の近視に悩む親御さんが、お子さまを連れて多く来院されています。

 近視とはどんな症状なのかを簡単に説明しましょう。近視は屈折異常のひとつ。平行光線が網膜の前方で像を結ぶため、近くにあるものを見るときにはピントが合うが、遠い所はよく見えない状態のことをいいます。

 文科省が昨年11月に公表した2022年度の学校保健統計調査によると、裸眼視力1.0未満の割合は、小中高いずれの段階でも過去最多。小学生では37.8%、中学生では61.2%、高校生は71.5%でした。

 また、東京都内の小中学校に限っての近視の有病率では、小学生で76.5%、中学生で94.9%という報告もあります(慶応大眼科教室近視研究チームの2019年の発表)。

 近視の子供は今後も増えていくことでしょう。なぜなら、授業の中でタブレットやパソコンを使用することが当たり前となり、さらには長時間スマホを使用しているお子さんも多い。デジタルデバイスが増えていることが、近視を増加させていることは間違いありません。

 とはいえ、子供の近視が増加しているのは、すべてがデジタルの進歩のせいだけではないと私は考えています。戦後からずっと近視は増えており、その理由は生活習慣やスタイルの変化が大きい。たとえば昭和の頃を振り返ると、子供は小学校から帰るとランドセルを放り出してすぐに外に遊びに出かけるというのが当たり前の過ごし方でした。実は最近の研究で、外遊びで太陽光を浴びると近視の進行予防になることがわかってきました。

 けれども、いまでは学校が終われば塾、塾から戻れば家で宿題、その後はスマホやゲーム。外遊びをすることなく、ほぼ終日近業作業(近くを見る作業)にシフトしている。

 近視は、近くを見ることに適しています。近くのものを見るときに目が楽で疲れないのが、近視なのです。だから、近業作業が増えると、体が適応反応として近視になっていく--。近視が増える一方なのはそういう環境に合わせようとする体のメカニズムもあるのです。

 近視の多くは学童期に発症します。とくに進行が著しいのは小学校4~5年生の頃で、成人して24、25歳になると進行が止まることが多い。また、近視は遺伝が重要な要因でもあります。しかし、それだけでなく先ほどお話ししたような環境要因も大きいと考えられています。

 近視を正視に戻すのは困難ですが、治療方法がないということではありません。次回は「子供の近視の治療」についてお話ししたいと思います。

荒井宏幸

荒井宏幸

クイーンズ・アイ・クリニック院長。医学博士・眼科専門医。医療法人社団ライト理事長。みなとみらいアイクリニック主任執刀医。防衛医科大学校非常勤講師。

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