梅毒急増の「なぜ」

梅毒急増のなぜ(3)年間200人の妊婦が感染…過去最多の先天梅毒へ

妊婦は完治しても胎児もそうだとは限らない
妊婦は完治しても胎児もそうだとは限らない

 妊孕力の高い20代の女性に梅毒が急増していることは、妊婦の梅毒感染と、その子供たちの感染である先天梅毒の増加を意味する。実際、妊婦の梅毒関連件数は、梅毒の届け出用紙に妊娠の有無を記載するようになった2019年以降、毎年200件前後(全女性感染者の7.9%)報告されている。先天梅毒も20件前後報告されていて、2023年はその数が37件と過去最多になった。

性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(KADOKAWA)の著者で日本性感染症学会功労会員でもある「プライベートケアクリニック東京」(東京・新宿)の尾上泰彦名誉院長が言う。

「先天梅毒は、梅毒トレポネーマが胎盤を通過して母体から胎児に感染する多臓器の慢性感染症です。感染時期が妊娠の後半であるほど胎児の感染率が高くなる。だからこそ、梅毒は妊娠初期には必ず受ける検査となっていて、母子手帳には梅毒血清反応という項目で記載されています」

 日本の母子手帳の交付率はほぼ100%だが、若年の妊婦の中には妊娠に気づいていなかったり、出産の決意が定まらない時間が過ぎて妊娠中の梅毒検査を受けなかったケースもある。

 怖いのは妊娠初期に感染した梅毒の場合、母親は治せても一定の割合の胎児は先天梅毒を発症してしまう可能性があること。また、胎児に感染すると約40%が流産、早産、子宮内胎児死亡を起こし、約40%の新生児が先天梅毒を発症するといわれている。

 先天梅毒の新生児は誕生後に亡くなるリスクが高く、生き延びても生後数カ月以内で聴覚障害、リンパ節腫脹、骨軟骨炎などを発症する。

 万一でも、わが子が梅毒に感染すれば、そのカップルに亀裂が入るのは間違いなく、離婚に至ってもおかしくない。では、妊婦の梅毒感染を防ぐにはどうしたらいいのか?

「まず、お互い浮気をしないことが最も大切です。また、子供をつくろうと考えているカップルは妊活を始める前に必ず2人で性感染症の検査を受けましょう。妊活する前の性交では必ずコンドームを着用しましょう。梅毒はコンドームで100%回避できるわけではありませんが、ある程度の予防にはなります」(尾上泰彦院長)(つづく)

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