脳卒中の発症リスクは、加齢に伴い増加することが知られています。一方で、若年から中年の人でも脳卒中を発症することがあります。特に、椎骨動脈解離という病気を発症すると、脳卒中を起こしやすいことが知られています。
椎骨動脈解離とは、首の後ろを通る血管の膜がはがれてしまう病気のことです。
椎骨動脈解離の原因については、遺伝や生活環境との関連性が指摘されているものの、詳しいことは分かっていませんでした。ただし、欧米人と比べると東洋人で発症が多い傾向にあり、生活習慣などの文化的な違いに原因があるのではないかと考えられてきました。
そんな中、枕の高さと椎骨動脈解離の関連性を検討した研究論文が、欧州脳卒中機構が発行している学術誌の電子版に、2024年1月29日付で掲載されました。
日本で行われたこの研究では、国立循環器病研究センターで椎骨動脈解離と診断された53人と、同時期に入院したものの椎骨動脈解離と診断されていない53人が対象となりました(年齢の中央値は49歳)。
被検者に対して、就寝時に使用している枕の高さが調査され、椎骨動脈解離との関連性が分析されています。なお、枕は高さが12センチ以上で「高い枕」と定義されました。
その結果、高い枕を使用していた人は、椎骨動脈解離と診断されていない人と比べて、診断されていた人で多いことが分かりました。
両者の関連性を統計解析したところ、高い枕の使用で椎骨動脈解離の診断が2.89倍、統計学的にも有意に上昇しました。
論文著者らは、高い枕の使用による椎骨動脈解離を「殿様枕症候群」と名付け、何げない睡眠習慣が脳卒中の危険因子となり得る可能性を指摘しています。