花粉症専門医に聞く(4)新薬「ゾレア」はどんな人が対象になる?

スギ花粉のシーズンが終わるのは5月の連休が明ける頃
スギ花粉のシーズンが終わるのは5月の連休が明ける頃

 重症患者向けに開発された「ゾレア」(一般名オマリズマブ)は、抗IgE抗体医薬になります。花粉症は、IgE抗体がマスト細胞に結合して起こります。ゾレアは、この結合を防ぐ働きがあります。

 ゾレアは本人が使いたいと思っても、決まった条件をクリアしないと使えません。まず、スギ花粉に特異的なIgE抗体が認められること。アレルギー検査(血液検査)でスギ花粉抗原に対する血清特異的IgE抗体がクラス3以上でゾレアの投与対象となります。

 次に、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイドといった既存治療を1週間以上行い、効果が不十分であること。ちなみに、ゾレアを使う場合も、抗ヒスタミン薬は併用することになります。

 ゾレアは注射薬。体重に応じて量が決まっており、2週間または4週間に1度皮下注射します。

 臨床研究では、花粉飛散前から抗ヒスタミン薬を服用し、症状が出てから鼻噴霧用ステロイドを使った患者さんのグループでは、花粉飛散のタイミングでは鼻症状が7点近くまで達したのに対し、ゾレアを併用した群では5点近くまでしか上がりませんでした。しかも、症状が花粉飛散前と同等のスコアまで速やかに戻ったのです。従来薬ではどうしようも対応できなかった重症患者さんにとっては、かなり期待できる薬です。

 スギ花粉のシーズンが終わるのは5月の連休が明ける頃。今年は花粉の飛散時期が早かったものの、終わる時期は例年ほぼ同じです。それまで自分に合った薬を用いての対策が必要。もちろん、花粉を極力吸い込まない、体につけない、家の中に入れないといった、基本的な対策も忘れてはいけません。

 花粉症シーズンが終わったら……。完治させたい人はスギ花粉のエキスを少しずつ体内に入れる免疫療法という治療法を検討してもいいでしょう。皮下に注射で投与する皮下免疫療法と、舌の裏側から投与する舌下免疫療法があります。いずれも保険適用。治療期間が3~5年と長期にわたり、すべての人が完治するわけでないことがネックですが、試してみる価値のある治療だと考えています。 (おわり)

▽大久保公裕 日本医科大学大学院医学研究科頭頚部感覚器科学分野教授。奥田記念花粉症学等学術顕彰財団理事長。NPO花粉症・鼻副鼻腔炎治療推進会理事長。

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