更年期症状だと思っていたら「心房細動」だった…放置すると脳梗塞も

更年期症状だと思っていたら…
更年期症状だと思っていたら…

 女性の更年期はいろんな不調に襲われやすいが、放置すると重篤な脳梗塞につながりかねない場合がある。国際女性デー(3月8日)を前に、医師に話を聞いた。

 更年期は女性ホルモンが急激に減少するため不調が生じやすい。症状は多岐にわたり、例えばイライラ、ホットフラッシュ、指のこわばり、不眠、めまい、動悸・息切れ、疲労感、食欲低下、頻尿……。更年期症状というものがあることはよく知られているため、不調があっても「更年期だから仕方がない」と我慢してしまいがち。しかし、「更年期症状だと思っていたら別の病気だった」というケースがある。そのひとつが心房細動だ。杏林大学医学部付属病院循環器内科の副島京子教授が言う。

「心房細動の症状は、動悸・息切れ、疲労感、食欲低下、頻尿。更年期症状としてもよく見られるもので、心房細動か更年期症状かは症状だけでは見分けがつきません」

 心房細動は、心臓内の部屋(心房)が正常時の4~10倍細かく震える。脳梗塞の中でも重篤で死亡率が高い心原性脳梗塞の原因になる。

「心房細動があると、脳梗塞など脳卒中のリスクが5倍、全死亡率が2倍高くなるといわれています。命は助かっても半身不随など後遺症が残りやすい。一方、心房細動を早い段階で見つけて治療をすれば心原性脳梗塞は防げます。しかしそうならず、脳梗塞を起こしてから心房細動が判明する方が、心房細動による脳梗塞の4分の1を占めます」(副島京子教授=以下同)

 オムロンヘルスケアが2023年に実施した女性対象の調査では、動悸・息切れに不安を感じながらも約半数が放置。45~66歳の更年期を含む年代では24%が「更年期だと思うから」を理由に挙げた。もし、その動悸・息切れが心房細動によるものであれば、脳梗塞を防ぐチャンスをみすみす逃したことになる。

 というのも、動悸・息切れといった症状があれば、ある意味、ラッキーと言えるかもしれないからだ。

「心房細動は、症状があっても深刻に捉えないという点に加え、半数は症状がなく、また発作的に起こった場合は症状が一時的なので自覚しづらい点も早期発見を難しくしています」

 動悸・息切れ、疲労感、食欲低下、頻尿といった心房細動を疑う症状があれば病院を受診する。症状がないからといって、「自分は大丈夫」との思い込み厳禁なのも前述の通り。 

■スマートウオッチで早期発見

「ご自身で脈を測定し、脈の乱れなどを確認する。さらに今は、自宅で簡単に心電図をチェックできるツールが複数出ています」

 アップルウオッチをはじめとするスマートウオッチには脈拍を測定する機能がついている。またオムロンは、指や足を触れさせるだけで測定できる携帯型心電計を発売している。病院で測定できる心電図は、24時間ホルター心電図(24時間装置を身につけて測定する検査)にしても、その検査をしている時の心電図しかチェックできない。しかし心房細動は常時起こっているとは限らず、検査時は正常ということも。24時間どころか、毎日装着するスマートウオッチは、日々の心臓の動きをチェックできるので、心房細動早期発見の強い味方となる。

「動悸で受診されたある女性は検査しても引っかからず、24時間ホルターでも異常が見つかりませんでした。スマートウオッチの話をしたら、すぐに購入。それによって心房細動が判明し、診断がつきました」

 自宅で測定する場合、スマートウオッチなどでわかる心電図の記録を受診時に持参すると、診察がスムーズだ。

 心房細動は女性だけの病気ではない。日頃からの脈や心電図のチェックや、不調があれば病院を受診ということは、性別に限らず知っておくべき。ただ、女性は更年期以降、心房細動のリスク因子である高血圧や肥満になりやすく、心臓の筋肉が少ないため男性より進行スピードが速い。念頭に置いておこう。

■最も大きなリスク因子は…

 心房細動は、高血圧、心臓病、糖尿病、飲酒、喫煙、ストレス、疲労、脱水など複数のリスク因子がある。しかし最も大きなリスク因子は加齢。年を取るとともに患者数が増える。ちなみに心房細動の症状に頻尿があるのは、心房細動によって心房利尿ホルモンが大量に分泌されるため。

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