上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

脈拍が速いと早死にするという説は本当か?頻脈は心房細動リスク増

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 脈拍=心拍数が速い人は早死にする──。こんな“説”を耳にしたことがあるのではないでしょうか。厳密には、心拍数は心臓が一定時間内(1分間)に拍動する回数、脈拍は体内の各血管が一定時間内(1分間)に拍動する回数を指しますが、同じ意味として考えます。

 哺乳類は、一生の間で心臓が拍動する回数が決まっているといわれていて、東京工業大学名誉教授で生物学者の本川達雄さんは、著書の中で「哺乳類ではどの動物でも、一生の間に心臓は20億回打つ」と紹介しています。その伝で言うと、脈拍が速い人はそれだけ早く亡くなり、遅い人は逆に長生きするということになります。

 たしかに、1分間の心拍数が450~550回と多いハツカネズミは寿命が1年半~2年と短命です。同じく、ウサギは150~280回で3~4年、ネコは120~180回で10~15年、イヌは60~180回で13年前後となっています。一方、心拍数が30回程度と少ないゾウの寿命は70~80年と長生きすることが知られています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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