クスリには「貼付薬」があります。湿布薬はもちろんですが、それ以外にも成分によっては気管支喘息、狭心症や心筋梗塞、認知症、パーキンソン病などの治療に用いられています。
高齢者の中にはこういった貼付薬を使っている方も多くいらっしゃると思いますが、汗をかいたときや衣類とこすれて剥がれてしまったという経験はないでしょうか。今回は、貼付薬が途中で剥がれてしまった場合にどうすればいいのかについてお話しします。
結論から言うと、剥がれてしまった貼付薬は粘着力が残っていたとしても再度貼らないほうがよいです。なぜなら、「再度貼った貼付薬は期待通りの効果を発揮できない」ことがほとんどだからです。
貼付薬は皮膚からクスリの成分が吸収されることで効果を発揮します。そして、湿布薬を除く貼付薬は基本的に1日1回貼るだけでよく、1回で24時間効果を発揮するように作られています。じつはこれは単純なことではなく、クスリの成分が24時間安定かつ確実に皮膚から吸収されるように、貼付薬にはさまざまな工夫がなされています。一度貼った貼付薬が剥がれると、こういった工夫の効果が失われてしまうのです。
その原因は皮膚の角質にあります。みなさんのご自宅にあるセロハンテープを腕などにしっかり貼り付けたあと、剥がしてみてください。剥がしたテープは貼る前のような透明ではなくなり、白く濁った感じになっているはずです。そうなる原因が角質です。角質は皮膚の表面にあって、テープと同様に貼付薬の粘着面と接触すると、それを剥がしたときに角質も一緒に剥がれてしまいます。つまり、貼付薬の粘着面に角質が張り付いた状態になってしまうのです。そのため、仮に再度貼り付けることができたとしても、クスリと皮膚の間に余分な角質が存在することになります。
繰り返しになりますが、貼付薬にはクスリの成分が安定かつ確実に皮膚から吸収されるように工夫されています。余分な角質が存在すると、そういった工夫が十分に機能できなくなり、クスリの効果に悪影響を及ぼしてしまうのです。
ごく一部の貼付薬は粘着面に角質保護成分を含有していて、一度剥がした後でも再度貼り付けることができますが、ほとんどの貼付薬はそれができません。ですから、もったいないと思うかもしれませんが、万が一、途中で貼付薬が剥がれてしまった場合には新しいものを貼ったほうがよいでしょう。特に汗をかきやすい季節は気をつけましょう。
高齢者の正しいクスリとの付き合い方