病気と共に生きていく

なんでこんな肌に生まれついたんだろう…どう生きたいのか見直した

「skin」/(提供写真)
「skin」/(提供写真)
榊原愛さん(39歳)=アトピー性皮膚炎

「skin」(写真)と名付けたこの作品は、アトピー性皮膚炎の悪化で家に閉じこもっていた時期に構想を練ったものです。

 いつ治るか分からず不安で、誰にも会えないから、気がおかしくなりそう。肌がかゆくてかゆくて、でも、かいたらぐちゃぐちゃになって、もっと悪化してしまう……。気持ちを紛らわせられ、両手が塞がり、かくのを避けられるもの。それが絵や編み物による表現方法でした。

 物心ついた頃には、もうアトピー性皮膚炎でした。ずっと薬を使い続けてきたんです。しかし、どこへ行くにも薬を手放せない生活を見直したいという気持ちがありました。

 かかっていた病院の皮膚科医が高齢で入院してしまったのも、ひとつのきっかけになりました。近場に専門病院がなかったため、内科のクリニックになんとかお願いして出してもらっていた薬が合わなくなってきたんです。耳たぶがアカギレみたいになり、薬を塗っても治らず、全身の乾燥状態がひどくなって……。

 インターネットで調べている中で、隣の県の岐阜県に私の希望に合う治療を行っているところを見つけ、そちらにお世話になると決めました。2018年秋のことです。

 いったんは症状が軽快したものの、2019年4月から5月くらいにかけて、急激に悪化しました。理由は分かりません。かゆすぎて、かくと皮膚がボロボロと剥がれる。寝ている間は布団で覆われ保湿されているのでいいんですが、朝布団から出ると一気に皮膚が乾燥し、バキバキして痛い。一日一日を耐えしのぐ感じです。

 日常生活を送るのも困難で、到底仕事に行ける状況ではなく、3カ月間休業。「skin」を制作し始めたのは、そういう時です。

 今はアトピー性皮膚炎の症状は落ち着き、肌のカサカサが出てきたら、食事の内容が悪かったなとか、不摂生しすぎたかなとか、体調のバロメーターにしています。

 あの、ものすごく症状がひどかった時、なんで私だけこんな肌に生まれついたんだろう、こんなつらい思いをしなくてはならないんだろうと思いました。先の見えない不安や恐怖と向き合いながら、この状態がずっと続くとしたら、この先、どうやって生きていきたいのかを自問しました。公務員をしていたのですが、ずっと抱えていたモヤモヤを、改めて見つめ直したのが、休業していた3カ月間でした。

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