依存症から命を守る

【ギャンブル依存症】借金200万円…それでもパチンコ通いをやめられない

写真はイメージ
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 やめたくてもやめられない──。依存症は特定の物質や行為に対するコントロールが利かなくなり、家族関係や社会生活へ悪影響を及ぼす精神疾患のひとつ。アルコールや薬物など対象は多岐にわたるが、中でも日本はパチンコや公営ギャンブルの普及から、世界的にずばぬけた「ギャンブル依存症」大国とされている。依存症の診療に携わる「マリアの丘クリニック」院長の近藤直樹氏に聞いた。

 脳内には脳内報酬系と呼ばれる部位があり、ギャンブルで金銭などを儲けると脳内報酬系が刺激され、ドーパミンが大量に放出されて快感や多幸感が生まれる。それを求めてギャンブルを続けているうちに刺激に鈍感になったり満足できず繰り返し求めるようになる。

「とりわけ、注意欠如・多動性障害(ADHD)の人は脳内報酬系の感受性が低く、コツコツ積み立てるのが苦手で、一発大当たりを求める傾向(遅延報酬障害)があるので依存症になりやすい。当院が行った調査では、ギャンブル依存症と診断された3分の1にADHDが認められています」

 30代男性は就職を機にお金に余裕ができパチンコ店に通うように。当初は週1回、5000円までと決めていたが、20代半ば頃から次第に回数が増え、消費者金融からの借金を繰り返し、その額は200万円まで膨らんだ。自分では返済できず親が肩代わりしたが、隠れてパチンコホールに通い仕事もおろそかになり親の勧めで受診した。

「依存症になるとお金を工面するためにウソをつくので、周りから愛想を尽かされ孤独になり、最終的に自殺する方も少なくありません。借金をするほどのめり込んでいれば依存症の可能性が高いので治療が必要です」

 依存症になると遅延報酬障害によって「ギャンブルの負けはギャンブルで返す」といった考えに至る。そういった認知のゆがみを正す認知行動療法や、当事者が集まって体験談を話すミーティングを通して自分を見つめ直し、依存症からの脱却を目指す。ADHDが原因となっている場合には、脳内報酬系を刺激する薬物療法を約6カ月継続するとギャンブルへの関心が薄れるという。

「また、ギャンブル依存症の人は真面目で勤勉な人が多い印象があります。依存症治療は原因となるものから距離を置くのが重要なので、パチンコに充てていた時間にダブルワークに励むと強制的にパチンコから離れられ、借金返済の費用も貯まるのでおすすめです」

 手遅れになる前に受診することだ。

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