依存症から命を守る

【処方薬依存】快感を求めて1カ月分をまとめて服用 不慮の事故で死亡例も

ODはカウンセリングが最も重要
ODはカウンセリングが最も重要

 近年、問題になっているのが10代の「処方薬」の依存だ。新宿東宝ビル横に集う“トー横キッズ”の間でも睡眠導入剤の転売が広まり、大きな社会問題になっている。「マリアの丘クリニック」院長の近藤直樹氏に聞いた。

 処方薬依存とは、医師によって決められた1回の用量よりも錠数が増え、衝動的な多飲を繰り返すこと。いじめや虐待、親との関係悪化によって生じた不安や寂しさから解放されようと抗不安薬や睡眠導入剤を過剰服用(OD)する。

「現在、一般的に出回っている睡眠導入剤は致死性が低く安全性が高いので、多量摂取しても死に至るケースはほとんどありません。ですが一度に30~40錠飲めば意識が“飛ぶ”ので、その快感を求めて1カ月分をまとめて飲むようになるのです。繰り返すうちに耐性がつき、少量では満足できず錠数は徐々に増えていきます」

 ただ処方薬依存の場合、錠数によってはフワフワと浮いた感じや眠気の症状で、周囲がなかなか気付きにくい。とりわけ注意したいのがODによる不慮の事故だ。現実のつらさから一時的に逃れようと処方薬をODすると、普段は抑制できている衝動が抑えられなくなる。その勢いで絞首や飛び降りで命を落とす若者が後を絶たないという。

「当院で処方薬依存の治療を受けていた10代の患者さんのうち、4人が不慮の事故で亡くなっています。未成年者の場合、家庭内環境の悪さから処方薬の依存に走るので、ODの悩みを親に話したり、逆に親が子供の異変に気付くのもかなり難しい。衝動行為を防ぐには、カウンセラーによるカウンセリングが最も重要です」

 大人になるにつれ、処方薬のODは体を壊すだけだと気付いて自然と依存から解放されるのに対し、未成年者は未熟なため強い感情に対する自己コントロールが難しい。カウンセラーが介入し、患者の親に代わって悩みを聞き出して処方薬に対する誤った認識を正し、処方薬に頼らないメンタルヘルスづくりを行うという。

「カウンセリングを通して内面的に成長するにつれ、依存は次第になくなっていきます。ひとりで抱え込まないことが大切です」

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