依存症から命を守る

【ゲーム障害】3日徹夜でゲームに没頭し倒れて救急外来へ…

WHOはゲーム依存症を国際疾病分類に追加
WHOはゲーム依存症を国際疾病分類に追加

 2019年、世界保健機関(WHO)はゲームに没頭し日常生活に支障を来す依存症を「ゲーム障害」として国際疾病分類(ICD)に追加した。中でも問題視されているのが中高生のゲーム障害だ。長期休みに急激に進行しやすいというから、春休みに備えて知っておきたい。「マリアの丘クリニック」院長の近藤直樹氏に聞いた。

 ある男子高校生は徹夜で3日間ゲームに没頭し、自室で倒れているところを親が発見して救急外来に。医師の紹介でマリアの丘クリニックを受診して、ゲーム障害の診断を受けた。

「ゲーム障害は、ゲームに熱中するあまり長時間プレーを続け、食事や睡眠を取らずに日常生活よりゲームを優先し自分自身をコントロールできなくなる依存症です。それにより栄養失調など健康に影響を及ぼしたり、学校へ行かず不登校になりやすい。他にも、ゲームについて家族からとがめられケンカになり、家族関係の悪化も招きます」

 10代に多い理由として、理性や行動を制御する前頭葉が発育途中なため自分の意思でコントロールするのが難しいことが挙げられる。また、脳には快楽や快感を担う報酬系と呼ばれる部位があり、ゲームを繰り返すと報酬系が絶えず刺激されて鈍感になり、ますますゲームにのめり込んでしまう。とりわけ注意欠陥多動性障害(ADHD)の人は生まれつき脳の報酬系の感受性が低いため依存症になりやすい。

 さらにゲーム障害は、時に事件につながるケースもあるという。

「ある生徒は、ゲームのことで父親と口論になり、暴行して警察に保護され、当院を受診しました。診るとADHDと自閉スペクトラム症(ASD)を併発していました。後者の特性が強いとコミュニケーションに困難が生じて学校で孤立しやすいのです。オンラインゲームの世界で仲間ができて居場所を見つけ、自己肯定感を維持していたといいます。高校卒業を機に精神疾患の人が一緒に暮らすグループホームに入所して完全にゲームを断ち、依存を克服しました」

 治療は原則的に医師やカウンセラーによるカウンセリングを行い、ゲームから離れて乱れた生活リズムを戻す。発達障害がある場合には薬物療法も並行する。それでも改善が見られない場合には入院が検討される。

「依存症は思春期の時期と重なり、親子間で解決するのが非常に難しい。医師やカウンセラーら第三者を挟むことが大切です」

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