ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の通訳、水原一平氏の解雇は、アメリカのスポーツ界に大きな衝撃を与えました。これを書いている時点(日本時間22日13時)では、水原氏がスポーツ賭博にはまっていたという報道がされています。
アメリカでは、「スポーツ賭博依存症(ギャンブル依存症)」が大きな社会問題になりつつあります。犠牲になっているのは主に若いZ世代の男性です。
スポーツ賭博はアメリカ50州のうち40州近くで合法です。いまだ違法とするドジャースのあるカリフォルニア州は少数派です。2018年の合法化以降、スポーツ中継の間にはスポーツ賭博アプリのCMがあふれるようになりました。大手アプリのCMには、ジェイミー・フォックス、ケビン・ハートらハリウッドセレブや、元スター選手も登場しています。
しかし賭博はアメリカの華々しいスポーツ界の歴史に、暗い影を落としてきました。1980年代に歴代最多安打記録を更新したピート・ローズ選手が、違法な野球賭博の疑いで球界から永久追放されたことを、覚えている人もいるでしょう。
ではなぜそんなスポーツ賭博が、多くの州で合法的に行われるようになったのでしょうか? 最大の理由は税収です。例えば今年2月に行われたNFLの決勝戦スーパーボウルでは、賭け金のトータルが230億ドルに上ったと伝えられているほどです。
そのためCMでもセレブを登用し、過去のネガティブなイメージを払拭しようとしているのがわかります。
しかし注意してほしいのは、そのCMの最後には必ず、ギャンブル依存の問題を抱えている人が救済を求めるための電話番号が明示されていることです。ホットラインに電話する人の数は、スポーツ賭博合法化以降4倍になったという数字があるほどです。
またニューヨークのお隣ニュージャージー州では、18歳から24歳の3分の1が何らかの形でオンラインギャンブルをしており、この数字は2017年の4倍。その多くが男性です。また2割が依存症などになりやすいリスクを抱えているといいます。
スポーツ賭博はAIのおかげで試合結果だけでなく、ピッチングなど一回一回のプレーにも賭けられるようになっています。賭けるかどうかの判断が瞬時に必要なゲーム性の高さにより、さらに依存する人が増えるのではないかと、専門家は警告しています。