働き世代 がんになったらお金はどうする~会社員編~(1)治療と並行して仕事を続けられるのか

病院にある「がん相談支援センター」の協力を仰ぐのもひとつの手
病院にある「がん相談支援センター」の協力を仰ぐのもひとつの手

 看護師FPとしてがん患者さんのお金の相談に乗るようになって8年。これまで私が経験した中でも、みなさんのお困り事と重なり合う部分が多いケースを4回にわたり紹介したいと思います。

 30代の会社員Aさんは妻、子供2人の4人家族。肺がんで通院して抗がん剤治療を受けています。治療スケジュールは6カ月で、有給休暇30日間を消化し終わるタイミングで復職を検討しています。ただ、営業職で外回りの業務であることから、抗がん剤治療と並行して仕事を続けられるか心配でたまらない──。

 会社勤めの方がまずやるべきことは、「○○という治療を○カ月間行う予定」という今後の治療スケジュールを主治医に確認し、会社に具体的に伝えることです。その際、「副作用や後遺症が仕事や生活にどんな影響を与える可能性があるのか」「どんな業務内容なら継続できるか」の2点を盛り込むようにしてください。

 自分一人では主治医にどう尋ねていいかわからないという方は、病院にある「がん相談支援センター」の協力を仰ぐのもひとつの手です。医療ソーシャルワーカーやがん相談担当の看護師らが対応してくれます。

 次に、就業規則をチェックします。時差出勤制度、在宅勤務制度など利用できる制度がないか。もしなくても、コロナ以降、働き方が柔軟になっている会社もあります。配慮や協力が得られないかを相談してみるといいでしょう。

 休職制度を利用する際、ほとんどの会社が無給となりますが、条件を満たせば健康保険制度から「傷病手当金」という給付が受けられます。有給休暇やほかにも職場で病気休暇などがある場合は使う順番を検討していくことをお勧めします。

 傷病手当金とは、大企業の健康保険組合、中小企業の全国健康保険協会(協会けんぽ)に入っている方が利用できる制度で、自営業や主婦、学生らの国民健康保険にはない制度になります。

 傷病手当金を受けるには、「業務外の病気やけがで療養中」「療養のために、今までの業務ができない」「4日以上仕事を休んでいる」「給与の支払いがない。給与が一部だけ支給されている場合は、傷病手当金から給与支給分を減額して支給」の条件を満たすことが必須となります。

 基本的には、ご自身で申請する必要があります(加入している健康保険によって異なる)。受給開始は即日ではなく、時間がかかることもあります。私が相談に乗ったケースでは、3カ月かかった方もいました。休職を考える場合、傷病手当金が支給されるまでのお金のやりくりも考えておく必要があります。

 さて、冒頭のAさんはどうなったか──。次回紹介します。(つづく)

▽黒田ちはる 看護師としての経験を生かし、看護師FP(R)としてがん患者の家計相談に乗る。黒田ちはるFP事務所代表、一般社団法人患者家計サポート協会代表理事。著書に「がんになったら知っておきたいお金の話」。

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