歯を削らない虫歯治療はここまで進化している…ドリルも麻酔も不要

小野氏によるレーザー治療(提供写真)
小野氏によるレーザー治療(提供写真)

 虫歯治療を受けたいけど痛いのは嫌。歯を削る大きな音が苦手……。歯が痛くても治療が怖くて歯科診療を避けている人は少なくないだろう。そんな人に朗報なのが、「削らない虫歯治療」だ。日本スウェーデン歯科学会認定医で「新橋歯科医科診療所」に勤務する小野宇宙氏に聞いた。

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 厚労省が2016年に行った歯科疾患実態調査によると、成人の約9割は虫歯を経験し、また3割は未処置の虫歯があることが分かった。虫歯は放置すると血液中に細菌が回り、心臓病をはじめとしたさまざまな全身疾患を発症させるリスクにつながる。だが、歯科治療に対する嫌悪感や恐怖心から、歯に痛みがあっても受診を後回しにしている人も少なくない。

 そういったイメージを覆す治療法が近年、日本でも導入されつつあるという。

「従来の虫歯治療は、患部をドリルで削る方法が一般的で、大きな音や振動を怖がる患者さんがよく見受けられます。また、ドリルを使用する場合、どんなに名医であっても虫歯になっている部分だけを取り除くのは難しく、虫歯と併せて健康な歯質も削られてしまう。そこで近年、削らない無痛の虫歯治療として注目されているのが『カリソルブ・ドックベストセメント療法』です」

 カリソルブ療法とは、患部に薬剤を塗布して虫歯だけを溶かし、殺菌する治療法だ。次亜塩素酸ナトリウムとアミノ酸を混ぜると起こるクロラミン反応によって虫歯が溶け出したら、専用のさじを用いてかき出す。ドリルで削らないため麻酔の必要がなく、治療時間も約20分と短いのが特徴だ。

「ただ、かき出す際に痛みが生じる方が一定数いて、これは『露髄』という神経が露出してしまう手前の状態です。そういった方に対しては、『ドックベストセメント』と呼ばれる銅イオンを含んだ薬液を併用すると、強い殺菌力により虫歯自体が無菌化されます。さらにドックベストセメントは虫歯菌を殺菌する成分を半永久的に出し続けるとされ、虫歯治療だけでなく再発予防も兼ねているのです」

■レーザーで虫歯を蒸発させる

 痛みが少なく削らない歯科治療は、歯科の世界における重要なテーマとして、日々研究が重ねられてきた。中でも近年、画期的な治療法として話題になっているのが「レーザー治療」だ。

「当院で導入している『エルビウムヤグレーザー』は、患部にレーザーを照射し虫歯だけをピンポイントで蒸発させる治療法です。水を併用するので痛みがなく麻酔の必要もありません。照射時間も2~3分程度で、虫歯を取り切ったら詰め物をして終了です。通常1回の治療で終わるので、患者さんからは従来法と異なり治療時間が短縮されたと喜ばれています」

 ほかにも、レーザー治療は虫歯が神経まで達した場合にも適応される。一見、歯の神経は太い1本の幹に見えるが、先端には木の根っこ状の細い枝が付いていて、その周辺には神経が入る狭い穴がいくつも存在している。それにより、従来の根管治療で用いられている器具では細かい部分まで届きにくく、十分な治療が難しいという。

「根管治療は歯科医師の間でも最も難しい治療といわれ、実際、東京歯科大学の調査によると保険治療における成功率は30~50%といわれています。取り残しが生じると痛みや違和感が生じる恐れがあります。しかし、レーザーであれば熱作用によって器具が入りづらい部位や枝分かれした神経の細かい部分までしっかりと殺菌でき、完璧な根管治療が実現できるのです」

 新橋歯科医科診療所では現在、削らない虫歯治療はすべて保険適用外。カリソルブ療法、ドックベストセメント、エルビウムヤグレーザー、それぞれ1歯(1回)につき1万6500円~+詰め物代(1万6500円~)+初診料。

 痛みの恐怖心から受診を後回しにしているなら、削らない治療を検討してみてはどうか。

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