突然発症、誰にでも…大人の食物アレルギーはこんなに危険

「大人の食物アレルギー」が急増している。原因は「アレルギー体質の人が増えているから」という説もあるが、アレルギー体質でなくても発症する人は少なくなく、はっきりしたことは分かっていない。

 発症は突然だ。子供の時にアレルギーと無縁だった人も、アレルギー体質でない人も、例外ではない。いわば、だれにでも起こる可能性があるのだ。大人の食物アレルギーの専門家である国立病院機構相模原病院臨床研究センター診断・治療薬開発研究室長の福冨友馬医師に話を聞いた。

 大人の食物アレルギーは、子供のそれとは原因が違う。

「子供の場合は鶏卵、乳製品、小麦などが圧倒的多数を占めます。一方、2009年から2011年の当院での統計では、大人は果物・野菜(リンゴ、サクランボ、大豆、メロン)、加水分解小麦、小麦(食べるだけでは平気だが、その後すぐに運動して起こる運動誘発アナフィラキシーショック)が非常に多かった。それ以外では甲殻類、スパイス、ナッツ、アニサキス、ダニなどです」

 加水分解小麦は、小麦のタンパク質を分解したもの。数年前、大人気のせっけん「茶のしずく(旧茶のしずく)」に含まれていたグルパール19Sという加水分解小麦でアレルギーを発症する人が続出し、これが原因の患者が増えた。

■食物アレルギーは花粉症と連鎖

 発症メカニズムも違う。子供のアレルギーは、母乳を介して、あるいは子供が直接食べて発症する。対して大人の食物アレルギーには、甲殻類やスパイス、ナッツ、アニサキスなどの原因となるものを「食べて発症するタイプ」に加え、「皮膚や粘膜のアレルギーから始まるタイプ」もある。

「果物や野菜によるアレルギーは、先に花粉症の発症があります。花粉症を引き起こす原因物質と同じようなものが果物や野菜の中にあり、それに反応して食物アレルギーを起こすのです」
「茶のしずく」の加水分解小麦(グルパール19S)も、皮膚や鼻・目の粘膜に原因物質が付着し、それが日々蓄積されていき、アレルギーになる。そこから、加水分解小麦だけでなく、通常の小麦にもアレルギー反応を起こすことになる。

 最近、海外の調査で、「意外な事実」が判明した。シャンプーや歯磨き粉、化粧品などに使われている防腐剤のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)や殺菌剤のトリクロサンの尿中濃度が高い人は、血液検査でアレルギー体質を示すIgE抗体陽性である人が多かったのだ。

「食物アレルギーに限らず、さまざまなアレルギー体質の原因になるのではないかとみられ、研究が進められています」

 ちなみに海外では、「環境に与える影響を懸念して」という理由で、トリクロサンなどの商品への使用の段階的停止を発表している大手製薬会社もある。

 子供の食物アレルギーは、成長にともない徐々に症状が軽くなり、消えてしまうことがほとんど。しかし、大人の食物アレルギーは、一度発症するとずっと付き合っていかなければならないケースが少なくない。

「発症前から気に病む必要は全くありませんが、かゆみや腫れ、下痢などのアレルギーを疑うような症状があれば、原因の食品を調べ、今後はそれを極力避けることです」

 アレルギー原因を探す方法は血液検査もあるが、一般的には不確実なので、皮膚検査を受けるべき。重症化すると、アナフィラキシーショックで死に至ることもある。早い対策が大事だ。

 

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