患者に聞け

【肺結核】 「日本では消えたと思っていたから病名を聞いて驚きました」

最初は風邪のような症状
最初は風邪のような症状(C)日刊ゲンダイ

 埼玉県川口市に住む無職、瀬戸浩一さん(仮名、69歳)。自宅近くの内科医で毎年1回受けていた、市が奨励する定期健診で「肺に気になる影があり、感染症呼吸器疾患の疑いがあります。大きな病院を紹介しますから、なるべく早い時期に精密検査を受けてください」と告げられた。

 大手通信機器メーカーを定年退職して、通販会社に再就職。その会社も66歳の時に辞め、夫婦で山歩きを趣味にしていた。

 身長174センチ、体重は60キロ強。血圧も正常で、これまで大病の経験もなく、毎日1時間の散歩を欠かさない健康的な生活を送ってきた。

 ところが、昨年秋の定期健診前に異変を感じたという。

 2週間ほど風邪のような症状が続き、断続的に乾いたような咳が出て、痰も止まらない。37度ほどの微熱も下がらなかった。

「咳や痰が出るのはたばこの吸い過ぎが原因かなと思って、たばこをやめてみました。また、ほかの症状として、理由もなく体がだるいわけです。時々、部屋が暑くもないのに寝汗もかきましたね。私はてっきり風邪だと思い込んで、市販の風邪薬を毎日飲んでいました」

 定期健診の後、自宅から電車で約30分の紹介された総合病院を訪ねた。

 精密検査を受け、喀痰塗抹検査(チール・ネルゼン染色=喀痰中に含まれる抗酸菌の有無や排菌量を見る検査)も受診。下された診断は「肺結核」だった。

 肺結核は、重症化すると咳や痰、だるさ以外に、胸の痛みや喀血もある。また、結核菌はリンパ節、腸、骨などにも感染(肺外結核)する場合がある。

「病名を聞いてちょっと驚きました。私たちが若い頃、『労咳』とか『国民病』といわれて恐れられてきた病気でしょう。でももう昔の病気です。数年前、学校での集団感染などが報じられていたのは知っていますが、日本からはほとんど消えた病気という認識でしたから、まさかと思いましたね。どこで感染したか見当もつきません」

 肺結核の発症は1945年がピークで、食生活の向上や衛生面での整備に加え、抗結核医薬品の発明や普及で減少した。

 ところが、97年になって新規結核患者数が増加し、99年に日本政府は「結核緊急事態宣言」を出す。肺結核は再興の感染症として注目されるようになった。

 瀬戸さんは同病院の隔離病棟に入院。イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールといった、10種類ほどの肺結核治療の医薬品を服用した。

 約3週間入院し、結核菌がほとんど消滅。もう感染しない程度まで改善して退院の許可を得た。

 しかし、現在も毎月1回、マスクを着用しながら通院治療に当たっている。

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