患者に聞け

【ピロリ菌】 除去が不十分だと再感染するケースも

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 昨年の秋、東京・世田谷区に住む団体役員、渡辺惣一さん(仮名、59歳)は、勤め先に10日間の欠勤願を出し、愛知県の実家に帰郷した。

 目的は年老いた母親の入院見舞いだった。

「幸い母親の病気はたいしたことはありませんでした。それよりも心配だったのは自分自身の方で、1カ月ほど前から食事が進まないなど、体の調子がどうもおかしかった。この際、精密検査を受診してみようと名古屋市内の総合病院を訪ねてみたのです」

 3日間ほど検査入院したところ、これといって体の異常は認められなかったが、1つだけ問題が見つかった。「胃にピロリ菌があります」と告げられたのだ。

 胃の粘膜に生息して、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がんなどを引き起こす「ピロリ菌」(長さ約4マイクロメートル)。世界保健機関の専門組織「国際がん研究機関」は、全世界の胃がんの8割はピロリ菌の感染が原因と報告している(2014年)。

 渡辺さんは、父親や祖父を「胃がん」で亡くしていることもあり、数年前に自宅から自転車で10分ほどの内科専門クリニックで「ピロリ菌」を除去していた。それだけに驚いた。

「“尿素呼気試験”という検査方法で、確か料金は5000円でした。検査でピロリ菌の感染が確認され、1週間、2種類の抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬の計3種類を飲み続けました。その後、再びクリニックで検査を受け、除菌されたと診断されたのですが……」

 ピロリ菌の除菌が1回で成功する確率は75%。うまくいかなければ再度1週間薬を飲むことになる。渡辺さんは1回で成功した幸運に感謝したという。一度除菌したら再び感染しないとも信じ込んでいた。

 それなのに感染が確認されたのだから、驚くのは当然だ。

 担当医には「除菌済み」の旨を伝えたが、「統計的にも再感染は極めてまれで、だいたい再感染率は2%ぐらいだと言われました。再発した場合、大きく2つの理由があるという説明もしてくれました」。

 1つ目は、完全に除菌されず時間を経て再び感染したケースで、2つ目は、除菌には成功したが再び感染が起こったケースである。

 いずれにしろ「ピロリ菌」の「除去」が確認できるまでには、約1カ月の期間を要する。そんなに長く名古屋で休むわけにもいかない渡辺さんは、自宅に戻ってから、最初とは別の世田谷区内の総合病院で「ピロリ菌」の検査を受け直し、再び「除去」をした。

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